アリナミン製薬株式会社(以下、アリナミン製薬)はビジネスに不可欠な情報系システムであるヘルスケアシステムのインフラをオンプレミスから、オラクルの「Oracle Cloud Infrastructure」(以下、OCI)とMicrosoft Azureのマルチクラウドに移行した。データベースには「Oracle Autonomous AI Database」(以下、Autonomous Database)を採用し、保守コストの約1/2削減を実現している。パートナーにはオラクル製品の知見の豊富さなどから、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)を選び、設計から構築、運用までを任せている。
課題と効果
課題
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- 老朽化したデータベースのセキュリティリスクを解消したい
- データベースの保守コストを削減したい
- インフラをオンプレミスからクラウドへ移行したい
効果
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- 最新のAutonomous Databaseの採用でセキュリティリスクを最小化
- Autonomous Databaseのライセンス体系で保守コストを約半減
- OCIとMicrosoft Azureのマルチクラウドに移行し、柔軟性向上などを実現
データベースの老朽化対策とインフラのクラウド化に取り組む
ビタミン剤「アリナミン」、かぜ薬「ベンザブロック」などのブランドの製品で知られるアリナミン製薬。アリナミンは錠剤やドリンクだけでなくゼリータイプも加えたり、睡眠の質を改善する「アリナミンナイトリカバー」によって新たな付加価値を提供したりするなど、各製品について長年保有する資産を有効活用してビジネスを拡大している。
同社は2021年4月1日、親会社変更に伴い、現社名のもと新たに始動した経緯を持つ。ITにおいては、始動当初は製造・販売・在庫などの主要システムは旧親会社時代のものを引き続き利用し、事業継続することに主眼を置いていた。それが一段落したのち、クラウド移行をはじめとする攻めのIT投資を徐々に拡大している。さらに並行して、老朽化対策も着実に実施してきた。
クラウド移行および老朽化対策の対象のひとつとなったのが、情報系システムのヘルスケアシステムである。同システムは在庫や販売などの情報を同社と卸売と小売との間で連動して一元管理・可視化する。他にも取引先や顧客の情報など、あらゆるデータが集約されており、日常業務に欠かせない重要なシステムである。スクラッチで開発し、オンプレミスの仮想化基盤上で稼働していた。
ヘルスケアシステムの中では特に、データベースの老朽化対策が急務であった。Oracle Databaseを長年使用していたが、サポート切れが控えており、パッチの提供停止によるセキュリティ低下が懸念されていた。
データベースは老朽化と同時に、保守コストの課題も抱えていた。CPU単位で料金が発生する従来のOracle Databaseのライセンス体系は、同社の仮想化基盤の構成や運用形態ではコスト高になってしまい、その見直しも強く求められていた。
クラウド移行に関して、アリナミン製薬は全体でインフラは可能な限りクラウド化する方針を推進しており、ヘルスケアシステムについては、既存のオンプレミス環境のハードウェアのリース切れを契機に、クラウド移行に踏み切った。
データベースにAutonomous Databaseを採用
OCIとMicrosoft Azureのマルチクラウドへ移行
アリナミン製薬は要件としてまず、既存のヘルスケアシステムのシステム構成を極力維持したまま、クラウド移行できることを前提とした。同社では他システムのプラットフォームやMicrosoft 365などの関係で、メインのパブリッククラウドをMicrosoft Azureと定めている。データベースはアプリケーション改修の手間やコスト、リスクを考慮し、オラクルのデータベース製品を継続して利用することにした。
そのような要件のもと、クラウド移行およびデータベース老朽化対策の提案を複数ベンダーから募った。比較検討の末に採用したのがCTCの提案である。
提案内容は、インフラはMicrosoft AzureとOCIのマルチクラウドとした点が特徴である。Oracle Databaseの継続利用は決まっていることから、データベースのクラウドには親和性の高さからOCIを選んだ。また、もしデータベースに何かしらの問題が起きた際、OCIならクラウドと一体化したサポートが受けられ、システムの信頼性向上に繋がる点も期待できる。
アプリケーションのクラウドには、同社のメインのパブリッククラウドであるMicrosoft Azureを採用。これらMicrosoft Azure とOCIという2つのクラウドを高速専用線で接続する。このような構成のマルチクラウドなら、データベースとアプリケーション双方に最適であるうえ、将来のヘルスケアシステムの変更にも柔軟に対応できる。
この提案のもう1つの特徴が、OCI上で稼働させるデータベースに、オラクルの自律型データベースである「Autonomous Database」を採用したことだ。OCIと Autonomous Databaseの組み合わせなら、Oracle Database Standard Editionのライセンスで、Oracle Database Enterprise Edition相当の高度な機能が利用可能となり、保守コストの面で大きなメリットが得られる。
さらに、CTCはMicrosoft Azureにも精通しており、OCIとのメリットの違いや使い分け、連携をわかりやすく説明して提案した。
アリナミン製薬は、CTCのこのような提案内容とともに、オラクル製品の知見と実績の豊富さも高く評価した。CTCはもともとヘルスケアシステムのオンプレミスのインフラを手掛けており、システムや業務を熟知していることも採用の後押しとなった。
OCIやAutonomous Database とあわせて、CTCのシステム運用サービス「システムマネージドサービス」も導入し、障害対応や構成管理などに役立てる。
データベース保守コストを約半減
セキュリティリスクの最小化も達成
本プロジェクトは2023年夏に検討を開始。実際にOCI上にAutonomous Databaseのデータベースサーバー、Microsoft Azure上にアプリケーションサーバーを立て、両者を接続したPoCも実施した。
設計・構築は2024年に開始した。CTCはクラウドのインフラとデータベースを担当。従来のOracle DatabaseからAutonomous Databaseへの移行では、変更が必要となった箇所に素早く対応した。
アプリケーションは元々担当していた他ベンダーが担当し、データベースとの接続はCTCが協力して行った。OCIとMicrosoft Azureの連携、両者間の通信速度も含めたパフォーマンスのテストも念入りに行い、2025年5月に本稼働を迎えた。
アリナミン製薬はヘルスケアシステムのインフラをOCIとMicrosoft Azureのマルチクラウドに移行し、かつ、データベースにAutonomous Databaseを導入したことで、様々な効果を得ている。
当初の課題であったデータベース老朽化対策に関しては、Autonomous Databaseの最新の安定化バージョンになったため、継続的なパッチ提供により、セキュリティリスクを最小化できた。
データベースの保守コストの課題も、先述のOCIとAutonomous Databaseの組み合わせによるライセンス体系のおかげで、単純計算で従来の約1/2にまで保守コストを削減できた。
オンプレミスからのクラウド移行についても、狙い通りスムーズに達成できた点は大きな成果である。安定稼働を続けており、信頼性もパフォーマンスも申し分ない。OCIとMicrosoft Azureのマルチクラウド構成ゆえにコスト最適化や柔軟性向上を実現できたことも大きな効果だ。
CTCの技術力やサービスも高く評価している。なかでも、Oracle製品で問題が発生した際、オラクルに問い合わせずとも、CTC内の知見によって早期に解決できることも期待している。
今後はヘルスケアシステムのさらなる最適化を順次進めていく。現在はBCPの一環として、西日本にレプリケーションサイトを構築している最中だ。さらにアリナミン製薬全社のシステムとして、AI活用などを下支えするデータ基盤の整備もCTCに期待しているという。
アリナミン製薬のシステムは、これからもCTCが支えていく。
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