コミュニティ ネットワークセンターはISPサービス提供インフラの完全仮想化を実施した。DRの仕組みには、「VMware vSAN™」(以下、vSAN)のストレッチクラスタを採用。遠隔地の2箇所のデータセンターをまたぎ、共有ストレージにデータを同期書き込みするActive-ActiveのDRを構築した。データロスを皆無にするなど、可用性の大幅な向上に加え、運用管理の負荷軽減なども実現している。
課題と効果
- 課題
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- 仮想環境にDR環境を構築したい
- ISPサービスの可用性を高めたい
- 運用管理負荷を低減したい
- 効果
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- Active-ActiveのDRを実現
- 完全仮想化でデータロスゼロの可用性を確保
- VMware製品による管理一元化と運用負荷を低減
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社コミュニティ ネットワークセンター
- 所在地
- 〒461-0005 名古屋市東区東桜一丁目3番10号 東桜第一ビル10階
- 設立
- 2000年2月2日
- URL
- http://www.cnci.co.jp/
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株式会社コミュニティ
ネットワークセンター技術本部
サーバグループ長川口 耕司氏
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株式会社コミュニティ
ネットワークセンター技術本部
サーバグループ サブリーダー清水 博嗣氏
インフラを完全仮想化したうえでDR環境の整備に取り組む
株式会社コミュニティ ネットワークセンターは、愛知/岐阜/三重の3県で展開するケーブルテレビ各社を統括、運営する事業持ち株会社である。グループ傘下の11局にて、約150万世帯に地上波デジタルや、BS・CSデジタル放送サービスを提供するデジタル放送配信事業の他、インターネットサービスプロバイダー(以下、ISP)を提供する通信サービス事業などを展開している。
各局が提供するISPサービスを包括して支えるインフラは、数百Gbpsの大容量・高速ネットワークでリング接続されたマルチデータセンターの自社環境を活かし、コミュニティネットワークセンター自身で構築・運用を行っている。
株式会社コミュニティ ネットワークセンター 技術本部 サーバグループ長 川口 耕司氏は、「重大事故を起こしてはならないのは言うまでもありません。可用性の厳しい要件に応えられるよう、自分たちでシステムを深く理解しておき、何か問題が起きた際は適切な対応が即座にできる必要があります。そのために構築も運用も、同じチームにて行っています」と話す。
同社が取り組んでいるテーマのひとつがインフラの仮想化だ。従来はVMware vSphere®を軸に、部分的に仮想化を進めてきた。同社技術本部 サーバグループ リーダー ニコライボヤジエフ氏は「7年半無停止など安定稼働を続けていました。一方、ディザスタリカバリ(DR)は考慮されていないという課題も残されていました。可用性を高めるためにも、DR環境の整備は必須でした」と振り返る。
同社 技術本部 サーバグループ サブリーダー 清水 博嗣氏も「個別の仕組みで冗長化しているなどサイロ化しており、管理性が低下していました。しかも、複数ベンダー製品で構成していたため、障害の切り分けや問い合わせにも苦労していました。そのため、管理やサポートの一元化を強く望んでいました」と明かす。
vSANのストレッチクラスタでActive-ActiveのDRを構築
同社は、メールシステムのみを完全仮想化でリニューアルを行った。DRは別サイトでのバックアップによるActive-Standbyで実施。安定稼働しており、手応えを感じていたという。この経験もあり、続く、メール以外のインフラ全般についても、物理機器約40台の保守切れなどを契機に完全仮想化を決断し、前述の課題解決に着手した。
VMware製品を全面採用し、遠隔地2拠点のデータセンターにHCIを配置してシステムを構成した。両センターの各HCI内のストレージをvSANによって仮想的に統合し、共有ストレージ化した。
そして、DRには一般的なActive-Standby構成を採用しなかった。「当社の強みである超高速バックボーンを活かしつつ、より高い可用性を確保できるよう、同期書き込みによるActive-Active構成でのDR化を目指しました」とボヤジエフ氏は強調する。
Active-ActiveのDRを構築するために同社が採用したのが、vSANのストレッチクラスタ(以下、ストレッチクラスタ)だ。2サイトにロケーションが分かれればストレージは2つ独立して存在することになる。ストレッチクラスタは2つのサイト間(地理的に離れたサーバ同士)でも1つの共有ストレージとして扱うことができるため、Active-ActiveのDRを構築することが可能だ。
「ストレッチクラスタはDRオーケストレーションなど複雑な仕組みが不要で、VMware上だけで完結できるシンプルな構成であり、かつ、管理も一元化できるため、構築や運用の負荷も大幅に減らせるのが大きな魅力でした。その上、VMwareへのベンダー一本化もできます」(ボヤジエフ氏)
同社がシステム構築のパートナーとして選んだのがCTCである。「CTCは長年のおつきあいで、先日のメールシステムのリニューアルをはじめ、数多くの実績がありました。当社以外での大規模案件の経験も非常に豊富です。今回のシステム構成は国内に事例がない非常に大きなチャレンジであり、その成功に不可欠なパートナーは、実績が多く信頼の置けるCTCが最有力でした」と川口氏は語る。さらに「CTCは私たちの地元名古屋にも拠点があり、すぐに駆け付けてくれるなど、サポートが手厚いのも大変心強いと感じました」と続ける。
CTCとあわせて今回の導入を支援したのが、VMwareのプロフェッショナルサービス(PSO)だ。「専門家集団のPSOはVMware製品のベストプラクティスの提供などで私たちを支援してくれるので助かっています。さらに、海外を含めた最新事例やNW構成の提案なども積極的に行ってくれます」(清水氏)
データロス皆無で可用性を大幅向上 運用管理負荷の低減も実現
完全仮想化したインフラはにカットオーバーし、以降はトラブルもなく安定稼働を続けている。
「DRをインフラ全般に導入できました。しかも、Active-Activeの同期書き込みによって、データロスが皆無になりました。他にも、そもそも障害発生時の切り替え処理・作業が不要になったなど、一段上の可用性を実現できました。おかげで、お客様により安定したISPサービスを提供できる基盤を整備できました」とボヤジエフ氏はその効果を強調する。
続けて川口氏は、Active-Active構成のさらなる恩恵として、「データセンターのメンテナンスや引越が非常に容易になりました。例えば、システムを片方のセンターだけに寄せて、サービスを提供したまま、残りのセンターを止めてメンテナンスするなど、従来は不可能だったことが可能になりました」と話す。
さらにHCIとしてvSANを採用したトータルでの効果を川口氏と清水氏は次のように語る。「vSANによる予兆検知なども可用性向上に貢献しています。ストレージも含め、VMware vCenter上で一元管理可能になり、ベンダー一本化もできたので、運用負荷を飛躍的に軽減できました」(川口氏)。「仮想化で統合したことで、ネットワークまわりの構築・運用も楽になっています。まさに私たちが目指す少数精鋭での運用にぴったりなシステムを具現化できました」(清水氏)
他にも、物理サーバを1/3の台数に削減できたり、柔軟なリソースの拡張ができるようになるなどの効果が得られている。
同社は今後、今回構築したインフラを基盤に、サービスの拡充を図っていく。「蓄積したvSANのノウハウを活かしつつ、よりお客様のニーズに則した高度なサービスを、より短期間かつ少ない人数で構築します。ネットワークの仮想化や冗長化もあわせ、お客様の満足度がより高いサービスを提供できるインフラの整備も継続していきます」(ボヤジエフ氏)
導入製品・ソリューション
- VMware vSAN™(2018年度)