事例・コラム

伊藤忠テクノソリューションズ(自社)

更新

新人エンジニアの技術スキル習得と実用化を兼ねてエンジニア育成支援システムをAWS上にアジャイル開発

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、エンジニアトレーニングプログラムの一環として、Amazon Web Services(AWS)のサーバレス環境に「エンジニア育成支援システム」を構築した。エンジニアの計画的な人材育成と評価に使用する「個人別育成計画」のシステム化を検討していた中、新人エンジニアの技術スキル習得も兼ね、アジャイル開発手法を学びながら内製化することに決定。およそ4カ月でシステムを作り上げ、にリリースした。

課題と効果

課題
  • Excelシートの「個人別育成計画」は、集計・分析を行うことが困難だった
  • エンジニアの活用状況を把握しづらく、教育促進の材料として利用できていなかった
効果
  • 「個人別育成計画」の集計・分析を実現し、効果的なエンジニア教育が可能となった
  • アジャイル開発の経験を通じ、新人エンジニアの技術スキル向上につながった

導入事例インタビューデータ

会社名
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
所在地
〒100-6080 東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル
創立
1972年
URL
https://www.ctc-g.co.jp/
  • 伊藤忠テクノソリューションズ 技監 エンタープライズ第1本部 サービスビジネス技術第3部 部長 剣持 英雄

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    技監
    エンタープライズ第1本部
    サービスビジネス技術第3部
    部長

    剣持 英雄

  • 伊藤忠テクノソリューションズ アプリケーションビジネス推進部 アジャイル開発推進課 谷口 将太

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    アプリケーションビジネス推進部
    アジャイル開発推進課

    谷口 将太

  • 伊藤忠テクノソリューションズ エンタープライズ技術第4部 EIMANAGER技術第2課 石井 理瑛

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    エンタープライズ技術第4部
    EIMANAGER技術第2課

    石井 理瑛

  • 伊藤忠テクノソリューションズ エンタープライズ技術第3部 SE第2課 府川 萌美

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    エンタープライズ技術第3部
    SE第2課

    府川 萌美

  • 伊藤忠テクノソリューションズ エンタープライズ技術第4部 開発第3課 山本 竜也

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    エンタープライズ技術第4部
    開発第3課

    山本 竜也

課題

育成計画の集計ができないExcelによる運用を見直す

伊藤忠テクノソリューションズは、社員一人ひとりの能力・適性・意欲に応じた主体的なキャリア確立を目指す「キャリア形成支援制度」を取り入れている。キャリアに対する考え方を社員と上長と共有しながら計画的な人材育成、ジョブローテーションを実施する取り組みは、に厚生労働省「グッドキャリア企業アワード2019」の大賞を受賞するなど、社外からも高い評価を得ている。

中でも本業を支えるエンジニアの育成には力を入れており、事業グループごとに個別の取り組みも行っている。エンタープライズ・流通事業グループでは「エンジニア育成委員会」を組織し、事業グループに在籍する約1,000名のエンジニアを対象に「個人別育成計画」を作成。エンジニアごとに学習計画を作成し、トレーナーによるレビューと実績評価、及び人事考課との連携による動機付けにつなげるための取り組みをから行っていた。

「個人別育成計画は、Excelシートで作成し運用していました。この方法ではエンジニアがどのような勉強をしているのか、どのような実績を上げているのかを集計することができないという課題を抱えていました。こうした課題を解決してデータを可視化するために、エンジニア育成委員会ではExcelシートによる運用に代えて『エンジニア育成支援システム』を構築できないかを模索することにしました」(CTC 技監 エンタープライズ第1本部 サービスビジネス技術第3部 部長 剣持 英雄)

エンジニア育成委員会の委員長を務める剣持は当初、システム化には費用がかかることを想定し、2019年度に要件定義と企画化を実施して2020年度の予算を獲得した上で、度に導入することを考えていたという。

「検討を重ねた結果、Excelシートと同様の運用をするのであれば、パッケージやOSSを使って高機能なシステムにする必要はなく、自社開発したほうが早く、安いという結論に至り、内製化することにしました」(剣持)

経緯

システム化とトレーニングの一石二鳥を狙う

しかし、せっかくエンジニア育成支援システムを開発するのなら、単に内製化するだけではもったいない。剣持はそう考えたという。

「現行のExcelシートをWeb化するというエンジニア育成支援システムのプログラムを作成するのであれば、新人エンジニアの技術スキルを向上させるためのトレーニングに活用できるだろうと考えました。システム化とトレーニングの一石二鳥を狙ったわけです」(剣持)

こうしてエンジニア育成委員会は、エンジニア育成支援システムの開発に着手した。

「新人エンジニアが担当するのであれば、安価な費用で開発できるので、とくに予算化の必要はありません。そこで2019年度中に開発・実装・テストまでを終え、2020年度から運用開始するという方針に切り替えました」(剣持)

エンジニア育成委員会では、各部署から新人エンジニアを預かって育成しているアジャイル開発推進課に開発を依頼。これを受け、アジャイル開発推進課ではに入社した3名の新人エンジニアを選定した。

「エンジニア育成支援システムの開発は、新人エンジニアだけでなく私たちにとってもアジャイル開発の勉強になる良い機会です。ある程度の裁量をもって開発を進められるということで、快く引き受けることにしました」(アプリケーションビジネス推進部 アジャイル開発推進課 谷口 将太)

選択

プラットフォームにAWSを採用しサーバレス構成を選択

エンジニア育成支援システムのアジャイル開発が始まったのは、のこと。剣持がプロダクトオーナー、谷口がスクラムマスターに就任し、1週間単位のスプリントを回しながらシステムを構築するというプロジェクトがスタートした。

エンジニア育成支援システムの要件については、「Excelシートで運用していた個人別育成計画をWebベースに移行すること」「各個人の記入データを取り出して分析できるようにすること」「メールの添付ファイルで送信するのではなく承認ワークフローで回せるようにすること」といった大まかな内容のもと、開発エンジニアにプロダクトオーナーを交えてインセプションデッキの構築、及びユーザーストーリーの収集から始めたという。

「エンジニア育成支援システムはクラウド上のサーバレスアプリケーションとして開発することを基本方針にし、フロントエンドはシングルアプリケーション(SPA)、そのプラットフォームには実績と経験があるAWSクラウドを採用することにしました。実行環境には仮想サーバの『Amazon EC2』ではなく、クラウドネイティブアプリケーションに適した『AWS Lambda』『Amazon API Gateway』『Amazon DynamoDB』などのサービスによる典型的なサーバレス構成を選択しました」(谷口)

サーバレスを選んだのには、新人エンジニアが将来的に有望な最新技術による開発手法を習得する意味合いもあった。

効果

新人エンジニアのスキル向上に絶大な効果を発揮

実際の開発は、まさに新人エンジニアのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で進められた。新人エンジニアは配属先のエンタープライズ・流通事業グループによる研修でJavaプログラミングの基礎を学んだものの、アジャイル開発やサーバレスについては全くの未経験。スクラムマスターの谷口からアドバイスや教えを受けながら、新人エンジニアが中心となってシステムを作り上げていった。

1週間単位のスプリントを回して進められたエンジニア育成支援システムの開発は、およそ4カ月の期間を経て、2020年3月末に完成を迎えた。開発やテストを担当した新人エンジニアたちは、半年にも満たない初めてのアジャイル開発の経験を通じ、自身のスキルが向上したことを実感している。

コーディング(主に画面回りなどフロントエンド)を担当した石井理瑛は「実際にコードを書きながら勉強することを繰り返し、アジャイル開発のやり方やシステムの仕組み、プログラミングを学ぶことができました」と語る。同じくコーディング(主にAWS Lambdaの実装)を担当した府川萌美は「開発担当が3人しかいないという自分がやらざるを得ない状況にあったこともあり、短い期間の中でシステム開発についてひと通りの経験ができたことは、将来の財産になると考えています」と話す。開発工程の後半になってプロジェクトに参加し、運用監視回りの実装とテストの実施を担当した山本は「CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインを『AWS CloudFormation』を使って構築するなど、DevOpsによる運用を回すための仕組みをしっかりと学ぶことができました」と振り返る。

アーキテクチャ構成

今後の展望

システムの情報を収集し次の教育施策に反映

こうして完成したエンジニア育成支援システムは、からの本番運用が始まる。新人エンジニアを育成するという目標を達成できただけでなく、AWSのサーバレス環境にシステムを内製化したことで開発コストを圧縮するという効果も得られた。

「エンジニア育成支援システムが出来上がったことで、従来は現場に依存していたエンジニア育成計画の進捗をきちんと把握し、正しく評価できるようになると考えています」(剣持)

今後はエンジニア育成委員会が提供している研修プログラムがどの程度活用されているのかといった情報なども積極的に収集する予定だという。

「収集した情報を分析することで、次の教育施策に反映していけると期待しています」(剣持)

また今回の取り組みを参考に、新人エンジニアの育成につながるアジャイル開発の社内プロジェクトを企画することも考えていきたいということだ。

  • このページについてツイッターでツイート(新しいウィンドウで開く)
  • このページをフェイスブックでシェア(新しいウィンドウで開く)

この事例に関するお問い合わせはこちら

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。