事例

伊藤忠テクノソリューションズ(自社)

更新

社内の開発者やSE向けに仮想データセンター貸し出しサービスを構築

SLAの定義されたITリソース内で、利用者自身が自由に開発環境を構成

ITリソースの仮想化は、企業に様々なメリットをもたらしてきた。古いOSを延命できるし、古いサーバを統合することで可用性の向上が可能となる。サーバ台数が少なくなれば運用の負荷も軽減するし、省スペースとなる。これらはコスト削減につながる。更に重要なのは、激変するビジネス環境へのタイムリーな対応だ。開発リソースやサービス基盤をスピーディに提供することで、ビジネスチャンスを逃さない機敏な経営ができる。

伊藤忠テクノソリューションズ(以下CTC)はこのリソースの素早い提供に着目し、複数の開発環境を仮想的に提供する仕組み(社内名称:SILAB)を完成させた。これにより、利用者は100時間かかっていた調達時間を1時間に、運用は0時間に短縮。

CTCでは、迅速にITリソースの提供を実現するソリューションとして「vDeps」をお客様に提供開始している。

課題と効果

課題
  • インフラ調達の手間とコスト負荷
  • 仮想化されたインフラの課金
  • 開発期間の短縮

仮想データセンター貸し出しサービス「SILAB」の提供

効果
  • 開発インフラ調達期間の大幅な短縮
  • インフラの運用負荷とコストの削減
  • 柔軟なインフラの組み合わせと課金の効率化

導入事例インタビューデータ

  • 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 データセンターサービス企画開発部 クラウドサービス企画開発課 課長 前田 正重

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    データセンターサービス企画開発部 クラウドサービス企画開発課 課長

    前田 正重

導入背景

日本の仮想化市場を牽引してきたCTC

米国でサーバ仮想化あるいはサーバ統合が潮流となったのは2005年前後のことであり、CTCもその動向に注目し、調査・技術習得に着手した。そして、いち早くVMwareを日本に紹介し、仮想システムのインフラ構築ビジネスを開始した。これが2006年のことである。以降、ブレードサーバと共有ストレージでインフラの全体最適を実現する「VM Pool」を2007年に発表、更には翌年ITインフラをクラウドで提供する仮想化ホスティングサービス「TechnoCUVIC」の提供を開始した。CTCは、仮想化の黎明期から国内の市場を牽引してきた。

その一方で、お客様により価値の高い提案をするために、社内クラウドの構築やその効果的な活用方法の検討を重ねてきた。ここで着目した1つがプロジェクトごとに発生していた開発や検証環境のためのリソース調達の手間や時間であった。「何枚かの申請書を出して調達を依頼するわけですが、これが結構複雑でした。外部から派遣されてきた技術者もいますので、そんな方々にも簡単に素早くできる仕組みを、仮想化技術を利用して提供できないかと検討を開始しました。これが2009年頃のことです」と、データセンターサービス企画開発部 前田 正重は振り返る。

同じ頃にパブリッククラウドのサービスがいくつか提供されるようになり、企業内でもプライベートクラウドの構築が見られるようになった。だが、課金や利用者側の自由度に課題も多かった。CTCはこれらを解決する仕組みとして仮想化環境によるITリソースの貸し出しサービスを検討し、2010年からトライアルを開始、2011年4月から本格的にサービス提供を開始した。

システム概要

システム概要イメージ

システム概要イメージ

マルチテナントに対応したセルフサービス開発基盤

ITリソースの貸し出しサービスを支援するソフトウェアとして採用されているのはヴイエムウェア社が提供する「VMware® vCloud Director®」。そのポータル画面からテナントごとに用意された指定のURLにアクセスし、プールされているサーバ、ストレージ、ネットワークを仮想データセンターからSLAに応じて切り出して、テナントごとに独自の環境を構築する。

環境作成時はあらかじめ用意されたカタログを利用することで、仮想マシンの環境構築の時間を短縮することができる。「Windowsなど代表的な3種類のOSとそれぞれ複数のバージョンを用意しているため、古いOS環境で検証することもできるようになっています」(前田)。カタログの提供時は差分のみが使用されるLinked Clone機能の利用も可能となっており、限られたリソースを効率的に使うことが可能だ。

マルチテナント環境はテナントごとのリソースの分離だけでなく、セキュアな環境も保証する。「ネットワークも個々に自由に構築することができます。プロジェクト内だけのネットワークもオフィスからの接続も可能です。プロジェクト間で干渉しないガバナンス体制を実現しています」(前田)。

ブラウザベースなので、クライアント側に特別なツールは不要。「堅固なデータセンターからサービスは提供され、24時間365日、どこからでもアクセスできます。オフィスが停電になるなどの災害時や電源設備の法定点検時でも、アカウントを持っているプロジェクトメンバーであれば別オフィスや、自宅から利用できます」(前田)。

導入効果

100時間の調達時間を1時間に

新サービス最大の導入効果は、インフラ調達時間の短縮である。「社内のワークフローの仕組みをそのまま取り入れていますが、1枚の申請書で済むようになりました。100時間かかっていた開発用のインフラ調達時間を、わずか1時間に短縮します」と、前田は強調する。当日から開発業務にとりかかることができ、検証環境も必要に応じて速やかに構築できる。更に、構築した開発環境の障害対応などの運用業務も、従来はプロジェクト側にまかされていたが、これもサービス提供側で対応する。「運用に煩わされることなく開発作業に専念できます。また、シンプルな仕組みなので、慣れていない方でも簡単に利用できます。早期着手や作業の効率化により、開発期間の大幅な短縮が可能になります」(前田)。

課金も仮想マシン単位ではなく利用した仮想データセンターリソース単位となり、利用側と運用側の負荷を軽減している。「仕様の決まったマシン単位で料金を決められると、自由度が低くなります。開発作業は工程ごとに必要となるリソースの増減が多く、このニーズに柔軟に応えることのできる仕組みを実現しました」(前田)。

コスト削減効果もある。プロジェクトごとに機材をレンタルで調達する場合は通常ラック、サーバ、OSの費用が必要となるが、これらが一切不要となりサービス料金のみで利用できる。また、リースの場合、プロジェクトが早期に終了しても遊休資産になるか有料でリースを解約することになる。しかし、新サービスでは追加費用なく簡単に解約可能だ。「開発のトータルコストを削減でき、これは競争力強化につながります」(前田)。

  • 当社実績2/3程度の費用

今後の展望

仮想ITインフラソリューション「vDeps」として提供開始

2011年4月から開始されたITリソースの貸し出しサービスは社内でも評判がよく、利用者が確実に増加している。CTC社内はもちろん、グループ各社でも利用されており、2012年12月現在で27テナントが利用中。発行されているアカウントは400を超えた。

そこでCTCはこのサービスをオンプレミス型のソリューション「vDeps」として2013年3月からお客様への提供を開始した。「vDeps」はCTC社内で展開されている企業内開発環境の基盤としてだけでなく、エンタープライズクラウド基盤、パブリッククラウドのサービス基盤での利用も想定している。

社内導入におけるシステム設計や運用の経験に基づき、「vDeps」導入の際の既存ITインフラとの親和性を検証するデモンストレーション/アセスメントサービスや、管理者ガイド、ユーザーガイドを含めた各種マニュアルも用意しており、クイックスタートと効率的な運用を可能にしている。

用語解説

VMware vCloud Director

ストレージ、ネットワーク等のリソースをプール化し、Webポータルから仮想マシンへのリソースの割り当てを容易にするソフトウェア。

仮想データセンター

ITリソースをソフトウェアで定義された仮想データセンターとして提供することで、従来の仮想化ではできなかった柔軟なITリソース配備を行う仕組み。

SLA

Service Level Agreement。サービス提供者と顧客との間で、回線の最低通信速度や利用不能時間の上限などを明確にし、それが達成できなかった場合のルールを合意しておくこと。

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