導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社奥村組
1907年に創業した株式会社奥村組(以下、奥村組)は「堅実経営」と「誠実施工」を信条とする総合建設会社で、2011年に発生した東日本大震災以来、被災地の復旧・復興を担うプロジェクトに数多く貢献しています。その中で奥村組はITを活用した業務管理システムをCTCと共同で開発し、業務の効率化と高品質化を実現しています。
-
株株式会社 奥村組
土木本部 土木統括部 環境技術室長 大塚 義一様、東日本支社 リニューアル技術部 工事所支援グループ長 森本 克秀様、管理本部 情報システム部 生産技術課 主任 酒井 一紀様
(写真左より森本様、大塚様、酒井様)
被災地のいち早い復興に貢献するために
奥村組はCTCと以下の業務管理システムを開発のうえ、東日本大震災の被災地で展開されている復旧・復興プロジェクトに適用しています。
名称 | 適用先 |
---|---|
災害廃棄物処理統合管理システム | 岩手県山田町・野田村の災害廃棄物破砕・選別等業務 |
除染統合管理システム | 福島県葛尾村の除染等業務 |
CMR事業統合管理システム | 岩手県山田町大沢地区の整備工事 |
また、膨大な数の除染土のう(除染で取り除いた土や放射性物質に汚染された廃棄物を保管した大型土のう袋)を指定の貯蔵施設に運搬するプロジェクトへの貢献を目指し、安全かつ高効率な輸送計画の策定に寄与する「輸送統合管理システム」を開発のうえ、現在発注者に積極的に提案しているところです。
「震災の1カ月後に被災地の荒れ果てた惨状を目の当たりにした時、建設業に携わる一技術者として何とかしなくてはならないという思いに駆られました。被災地では災害廃棄物の処理をはじめ、堤防・護岸などの修復、地域住民の意見を反映したまちづくり、放射性物質の除染など、復興に向けて課題が山積していましたが、これまでに培ってきた技術やノウハウを生かし、いち早い復興を実現することが我々の使命であると強く思いました」と奥村組の大塚氏は当時を振り返ります。
その上で大塚氏は、「復旧・復興プロジェクトの業務を効率よくこなしていくにはITを活用した業務管理が不可欠であったことから、業務の効率化や高品質化、工事関係者への安全・安心の確保、さらには他社との差別化に寄与する独自性に富んだ業務管理システムを開発する必要がありました」と語ります。大塚氏が当時担当していた岩手県山田町の災害廃棄物破砕・選別等業務でCTCと共同開発した「災害廃棄物処理統合管理システム」は同業務の推進に大いに貢献するとともに、両者の信頼関係を深化させる契機となりました。
当事例のテーマとなる「除染統合管理システム」の開発に携わった奥村組の森本氏は、「福島県葛尾村の除染等業務では1日当たり最大で約3000人を数える作業員の出退勤、被ばく線量、健康診断結果および教育履歴の管理が必要となることに加え、70万袋にも及ぶ除染土のうのトレーサビリティや放射線量の管理、さらには除染対象地区の出来高管理まで行う必要があり、それら全てを適切に管理していくためにはITを活用した業務管理システムを導入することが不可欠でした」と当時の心境を語ります。システムの出来栄えについて森本氏は、「除染等業務に従事する職員や作業員が安全・安心に働き、膨大な数の除染土のうを適切に管理できる環境を整えられたことにとても満足しています」と評価しました。
その一方、システムの運用面で葛尾村の現場に常駐し業務をサポートしてきた奥村組の酒井氏は、「CTCの支援のもと、現地で機能性に富んだ同システムの内容を速やかに把握し、実際に行われている除染作業とシステムの管理データを有機的に連携させることに専念しました。その甲斐もあって、現場の情報をほぼリアルタイムに把握し、発注者への業務報告などが迅速に行えるようになりました」とその有用性を実証しました。
最後に大塚氏は、「CTCの手厚い支援ときめ細やかな対応のおかげもあり、葛尾村の除染等業務は順調に進捗しています。今後も頼りになるパートナーとして良好な関係を維持していきたいと思っています」とCTCに大きな期待を寄せる言葉で締めくくりました。
葛尾村住民のためのシステムという思いで開発
3.11の未曾有の災害、特に福島は放射性物質により、とてつもない環境破壊が起こりました。
「除染業務はお客様も我々も初めて行うことなので、運用手順が一度でなかなか決まらないため、使いながら改善することを視野に入れて要件定義を行いました」と、本システムの開発に携わったCTCエンタープライズ開発第1部 西村 龍彦は語ります。
お客様に本当に使えるシステムを構築するには相当に手を掛けなければいけないことをしっかりご説明し、お客様とCTCとの間で業務の全プロセスを共有しながら進めていきました。特に、日頃お客様が意識されていないような手順も細分化してワークフローを作ることに注意しました。
除染計画にもとづいた作業の進捗管理、現場で働く作業員の方々の被ばく線量などの安全管理、そして一つひとつの除去物(土のう)がもともとどこにあったもので、現在どこにあるのかという管理を全てシステムで統合的に行うことで、全情報を正確に、有機的に見える化することを可能にしました。
「ITを使うからこそ迅速に、効率的に管理できること、また、全て証拠が残るため、いい加減な対応ができなくなることなど、システム化の利点を意識し、葛尾村の住民のためのシステムという思いで開発を進めました」と西村。「社会の環境負荷低減に少し貢献できたのではないかと自負しています」と微笑みました。