OutSystemsで内製化チームを最速立ち上げ
ICT部門によるDXの価値を引き上げた山善のさらなる挑戦
- 高性能ローコード開発プラットフォーム OutSystems
山善はハイエンド・ローコードのOutSystemsを軸に、内製開発チームを短期間で立ち上げ、業務アプリケーションの開発・改善を自走できる体制づくりを確立した。OutSystemsは現場の業務課題を吸収する全社アプリケーション基盤へと役割を拡張している。企画から開発までを一貫して対応する「ワンチーム」。その強い思いが生んだ、共通認証ポータルと慶弔ナビという2つのアプリケーションが、ガバナンスと現場価値の両面から内製化の手応えを形にしている。
課題と効果
課題
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- ERP稼働に合わせマスタ申請がExcelリレー・メールリレー中心で、チェックの限界と差戻しが多発
- データ品質が問われる業務で品質維持管理まで手が回りにくい
- ERPへの過度なアドオンは将来のバージョンアップに影響するため、周辺業務の効率化に向けた対応策が必要
- 外注依存から脱却し、ベンダーと対等に議論できる開発力・見積もり力・ガバナンスを獲得したい
- 内製化チームを実案件に接続し、標準・共通部品・レビュー・運用まで回せる体制を早期に構築する必要があった
効果
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- OutSystemsを「短期開発ツール」ではなく「基盤」として位置づけ、マスタ管理を起点に全社アプリケーション基盤へ役割を拡張する方針を整理
- Jump Start/オンライントレーニング/Boot Camp/勉強会/認定試験を一連の導線として設計し、内製開発チームの立ち上げを加速(全員が認定試験に合格)
- CTCの伴走開発によるアプリケーション構築フォローを通して、運用・改善を自社側へ段階移行する設計で、スピードとランニングコスト低減の両立を実現
- 共通認証ポータル(SSO)整備により、個別・匿名運用の混在を減らし、ログインとロール(権限)管理を入口で統制する方向性を明確化
- 慶弔ナビの展開により、現場の「迷い」を減らす具体価値を短期に可視化。内製化チームのスピードを生かし、構想からリリースまで3ヵ月で対応。
導入事例インタビューデータ
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株式会社山善
ICT本部グループIT戦略部
DX推進室 室長奥田 英乙 氏
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株式会社山善
ICT本部グループIT戦略部
DX推進室高下 由妃 氏
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株式会社山善
ICT本部D&A部
営業統計室小須田 博子 氏
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株式会社山善
ICT本部情報システム部
システム運用課長山根 淳 氏
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株式会社山善
ICT本部 執行役員
最高情報責任者
グループIT戦略部部長坂田 正則 氏
導入背景
“正しいデータが自然に入る仕掛け”を作る
検討の出発点は、ERP周辺で発生していた非効率なマスタ関連業務の改善だった。Excel申請やメール、SharePointを介した申請・承認・登録のラリーは、差戻しが起きる度に工数を増幅させ、結果としてデータ品質(件数・粒度・精度・鮮度)を維持する余力を奪う。ICT本部の奥田氏は、マスタ申請・承認・状況確認を画面上で完結させるだけでなく、入力段階でのバリデーション、マスタデータの一元管理、さらにはその利用・拡張性を目指した“マスタ関連業務の効率化及び開発基盤で利用できるマスタHUB機能”の構想を描いた。
「ハイエンド・ローコード基盤」であるOutSystemsの採用
DXが業務効率化に寄りがちな状況でICT本部が目指したのは、手順をほどき、ITとセットで再設計するBPR志向のDXである。作って終わりではなく、稼働後も改善を継続できる基盤が欠かせない。OutSystemsは、画面・ロジック・データ・連携を一体として設計し、部品化・再利用、変更影響の把握、チーム開発、ユーザー権限、リリース管理までをプラットフォームとして整えることができる。当初の課題においては基幹システムの堅牢さを保つため、過度なアドオンを抑制しつつ、OutSystemsでフロントエンドを構築。さらにそのフロントエンドをAPIなどで外部サービスとつなぎ、ユーザー利便性が向上できる点、導入においては小さく作って大きく育てる開発リズムを取り込める点が評価された。
「IT人材の不足に加え、開発の実務経験がなくベンダーへの依存度が高い状況からの脱却を目指し、内製化を見据えたソリューション選定を開始しました 。導入時の課題に対してはスクラッチ開発、ERPへのアドオン、パッケージソフトなど様々な選択肢を比較検討した中から、ローコードツールに絞り込みました。最終的に実現能力、ライセンス体系、サポートベンダーの質、ユーザーコミュニティの盛り上がりなどを総合的に判断し、ミッションクリティカルな業務にも耐えられるハイエンドなOutSystemsを選定しました」(奥田氏)
ローコードツール導入は「選定」よりも「使い方の切り分け」が難しい。山善はOutSystemsを、基幹システムと俊敏に連携しながら周辺業務を素早く作り替えるための中核として位置づけ、運用・ガバナンス・人材育成まで含めた推進設計へ踏み込んだ。
システム概要・導入効果
学習→資格→実践を見据えた内製化チームの最速立ち上げ
山善が重視したのは、学習と実装のスピードを最短にすることだった。まずオンライントレーニングで基礎を固め、次にBoot Campに参加して実践的な「作り方」を身につける。それらの学びを社内勉強会で共有しながら認定試験へつなげる。学びを階段状に積み上げ、最後に実案件へ接続する設計である。内製化チームを軌道に乗せるために結果を出さなければならない。集中して研修に取り組んだチーム全員が認定試験に合格した。これは単なるスキル獲得にとどまらない。チームとして学習をやり切り、共通言語を持つ文化が立ち上がったことが大きな力となった。
CTCの伴走により「型」を手に入れる
内製化を加速する上で効いたのは「最初の一歩」を小さくし過ぎないことである。学習だけでなく、実案件の場で設計・レビュー・開発・リリースの流れを通して、役割分担と判断基準を体得する。CTCはこの“最初の一周”を伴走で支え、以降は自社で回す比率を高める設計を取った。伴走開発で最初のアプリケーションを立ち上げ、運用・改善を自社側へ段階移行する形で、スピードとランニングコスト低減の両立を担っている。山善は、CTCの関わり方が「同じ目線」であることに手応えを感じているという。
「実際に関わっていく中で、ベンダー/ユーザー、発注者/受注者という関係ではなく、同じ目的に向かって、よりよいものを作っていこうという目線で入ってくれる。現場の視点に立ってくれる姿勢は他社ベンダーとは段違いだと感じています」(山根氏)
象徴的なのが、OutSystems上に共通認証ポータルを構築した取組みだ。受託開発でOutSystemsアプリが複数存在する一方、個別認証や匿名運用が混在し、ユーザーの把握や権限制御に課題が残っていた。そこで山善は内製化チームによる独自のアプリ開発により、ポータルにログインさせて認証を通し、そこから各アプリへアクセスさせる構造へ切り替えた。さらに、ユーザーごとにロール(権限)を設定し、管理者/参照のみなどのアクセス制御を行えるようにした。
「例えば『Aさんがログインした時は管理者権限で開く』『Bさんの場合は参照権限のみ』といった制御が一元的に行えるようになりました。これによりガバナンスが効くようになり、今後のアプリケーション開発における自由度と実現できることの幅が大きく広がりました」(小須田氏)
2025年12月に公開されたこのポータルでは、利用申請の受付や権限付与のオペレーションも内製化チームのメンバーでスムーズに運用ができており、社内へのOutSystems浸透の重要な基盤となっている。アプリが増えるほど、入口での統制は効果を増す。共通認証ポータルは、OutSystemsを「使い切る」ための前提条件であり、内製化を継続可能にする土台として機能している。
『慶弔ナビ』とマスタ起点の横展開
内製化チームが開発したアプリケーションの一つに、取引先の慶弔情報を管理する「慶弔ナビ」がある。一社の慶弔対応は頻度が高い業務ではないが、多くの取引先を抱える山善では日々慶弔対応が発生している。いざ起きると「何を、誰が、いつまでに」行うかが曖昧になりやすい。取引先リレーションが絡むため判断が属人化し、担当変更や地域差があるほど共有が難しくなる。
「取引先の社長交代や移転、担当者の慶事・弔事は商社にとって非常に重要な情報です。これをデジタル化し、さらに地図機能と連携させました。住所を入力するとGoogleマップが表示され、営業担当が訪問する際のルート確認までワンストップで行えます。これは画面のモックアップを作りながら『会場の位置がわかるような地図があったら便利だよね』という現場のアイデアを即座に実装したものです。従来の仕様書ベースの開発では生まれなかった機能だと思います」(高下氏)
必要情報と手続きの道筋を誰でも辿れるようにした「慶弔ナビ」が社内で評判を得たことは、内製化チームの価値を印象づける大きな契機となった。利用者の声が改善の優先順位として返ってくる。OutSystemsの短期間での開発は、このフィードバックループを回す手段として機能し、内製化チームは「使われながら改善する」運用感覚を獲得した。
さらに、初期構想であるマスタHUB機能を起点に、FAX業務支援(OCR+API連携+揺らぎ補正)や予実管理の入力フロントなど、複数領域へ展開することで、ERPへの入力業務(データ整備)をフロント側で吸収し、現場に合わせて改善できる余地も広げている。
OutSystemsの採用は「開発業務」の変革となった。要件変更を前提に、部品を再利用しながら改善を積み上げる文化は、外注依存の体制では根付きにくい。内製化チームが共通言語を得たことで、ベンダーと対等に議論し、見積もり・技術・品質・リスクにおいて、ベンダーの提案内容を自分たちで判断できる幅が広がった。
アプリケーションが増える前提でガバナンスを強化
内製化が進むほど重要になるのがガバナンスである。アプリケーションが増えると、個別認証や運用ルールのばらつきが生まれやすく、権限制御やユーザー管理が曖昧になりがちだ。山善は共通認証ポータル(SSO)を整備し、ログインとロール(権限)管理を入口で統一する方向性を固めた。入口を押さえれば、アプリケーションが増えるほど効き目が増す。また開発標準を整備することも重要であるため、CTCから標準開発規約であるスターターパックを提供してもらい、初期段階から活用した。ユーザー管理・ライセンス管理・共通部品配布を入口と連動させ、運用を“後追い”から“先回り”へ変えることができる。あわせて、標準・共通部品・運用ルールを自分たちでコントロールすることができる。内製化チームの本懐だと言える。
今後の展望
DXの推進力を落とさないために
内製化と並行して強化しているのが、IT投資の可視化である。維持費用か成長投資か、内向きか外向きかなどの投資の性質を整理し、計画に対するリターンや追加投資の余力を丁寧に捉える。ライセンス更新を惰性にせず、システムのライフサイクルを管理しながら、費用と投資のバランスの最適化が重要である。ライセンス更新や老朽化しているシステムはその性質・利用状況を踏まえ、見直し・モダナイゼーションを検討していく必要がある。手段としてOutSystemsは有力な候補の1つである。
「DXは業務効率化に寄りがちです。だからこそ、業務そのものを見直し、ITと組み合わせて再設計する視点が重要です。内製化は、コードを書く手段ではなく、事業価値の源泉であるプロダクトの主導権を確保する戦略と考えています。標準や共通部品・基盤を活用してTCOの最適化を図りつつ、自社で業務設計・改善し、変更速度を高めることでUX/CXの向上の実現を目指す。そのための体制づくりが大切です。そして自社でリソースが足りないときにはCTCさんといった実力ある外部ベンダーの支援を組み合わせ、迅速かつ継続的に目標(ROI)に到達できる状態を作りたいと考えています」(坂田氏)
OutSystemsを「業務のハブ」へ
山善が次に狙うのは、OutSystemsを「業務アプリ開発の道具」から「業務のハブ」へ引き上げることだ。ERPマスタの考え方を軸に、参照されるデータがOutSystems上に管理されている状態を作ることができれば、アプリケーション開発のためのマスタ連携やトランザクション連携が不要になる。これにより開発されるアプリケーションのスピードアップ・省力化が進む。「業務のハブ」として申請・権限付与・利用状況の可視化までを一体化した共通サービス基盤と、事業の中核となる様々なアプリケーションを開発・提供していく。これを支えるのはガバナンス・開発力・スピードを備えた体制である。
アプリケーション開発の横展開の鍵は似た構造の標準化だ。慶弔ナビは成功例の1つに過ぎない。暗黙知が残り、例外が多く、判断が属人化しやすい業務はまだまだ多い。これらを短サイクルで標準化し、現場の迷いを減らしながら改善を回せる状態にすることが重要である。この型を持てば、部門をまたぐ業務や申請・照会系など、横展開できる領域は広い。
CTC伴走で得た再現性を全社の推進力へ
CTCの伴走支援によって実現した内製化チームの取り組みは山善にとって指針となるベストプラクティスとなった。次に問われるのは、慶弔ナビで得た成功体験を横展開し、標準とガバナンスを崩さずに“増やして回す力”をどう磨くかである。ERPの堅牢さとOutSystemsの俊敏性をAPIでつなぎ、必要なところにAIのような新技術を差し込み、構造を整えていくことで変化に強いDX推進体制がより強固なものとなる。山善はOutSystemsを軸に、内製化を「開発手段」ではなく「事業推進力」へ引き上げようとしている。
「山善は商社としてお客様の課題解決に貢献する存在です。根幹の部分では伊藤忠グループであるCTCさんと考え方は同じだと思っています。OutSystemsを活用したアプリケーション開発もその一端となる可能性は大いにあるでしょう。CTCさんには今後も、単なる開発支援だけでなく、共に新しい価値を創るパートナーとして期待しています」(坂田氏)
さらに、OutSystemsの拡張性を活かしてAIを用いたデータ分析のUI画面を構築するなど、機械学習を組織の仕組みに取り込むことも見据えている。そのためのIT投資余力を見極める予算管理の整備も含め、推進の“型”を作ることで、変化に強く柔軟な開発環境の構築に向けた山善の挑戦は続いていく。