伊藤忠テクノソリューションズ(以下:CTC)は、アマゾン ウェブ サービス(以下:AWS)を利用するお客様向けに、AWSのコストを可視化・分析して最適なコスト運用管理を実現する「Hyper Billing」を導入した。BIツールを使ってコスト可視化の仕組みをお客様ごとに個別に用意していた従来に比べ、コスト管理にかかる業務負荷が軽減され、お客様のコスト運用効率が劇的に向上するという効果が得られている。
課題と効果
課題
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- 独自開発したセルフマネジメントツールを毎月のメンテナンスやAWS社の料金体系の変更に対する改修など運用面の課題があった
- お客様に対してはアカウントごとに料金レポートが提供され、各サービスの従量課金と総額を表示する簡単な機能しかなく、十分なツールとは言えない状況だった
効果
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- 独自ツールの運用から解放され、CTC社内の請求業務にかかっていた時間と手間も削減し、業務効率化を達成
- Hyper Billingにより従来の従量金額の閲覧だけではなく、コスト分析機能によってコストの最適化とさらにはお客様のコスト削減に寄与
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
- 所在地
- 〒105-6950 東京都港区虎ノ門4-1-1
- 事業内容
- コンピュータ・ネットワークシステムの販売・保守、ソフトウェア受託開発、情報処理サービス、科学・工学系情報サービス、サポートほか
- 従業員数
- 4,718名(単体・2022年4月現在)
- URL
- https://www.ctc-g.co.jp/
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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
ITサービス事業グループ ハイブリッドクラウド営業本部
クラウドパートナー営業推進部 パートナー戦略第2課
エキスパートエンジニア高橋 繁義
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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
ITサービス事業グループ ハイブリッドクラウド営業本部
クラウドパートナー営業推進部 パートナー戦略第2課朴木 瞳
課題
可視化ツールを独自開発するも運用と機能の課題解決が急務に
CTCは、AWSパートナーネットワーク(APN)コンサルティングパートナーの最上位ティア「AWS プレミアティア サービスパートナー」として、AWSクラウド環境構築のコンサルティングから実装、運用までをワンストップで支援している。また、300社以上の最先端IT企業とのパートナーシップによる「クラウドエコシステム 100 for AWS」を通じ、多彩な領域の検証済み製品群をインテグレートするなど、お客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を強力にサポートしているのもCTCの大きな特長だ。
長年にわたりAWSクラウドビジネスを展開してきたCTCでは、豊富な経験と実績に基づいて開発したセルフマネジメントツールも提供している。これまでも、AWSクラウドの利用状況を可視化するセルフマネジメントツールを独自に開発し、お客様に提供してきた。
「CTCはこれまで、クラウドBIプラットフォームを活用したコスト可視化ツールを独自に開発し、お客様への料金請求を目的に社内導入し、お客様にも利用料金を確認する目的で料金レポートとして提供してきました。しかし、AWSクラウドの料金体系は頻繁に変更されるため、そのつど設定や出力フォーマットを変えるのに苦労をしていました。機能的には各サービスの従量課金と総額を表示するだけの簡単なものであるにもかかわらず、アカウントを1つ追加するだけでも手を加えなければならないなど、決して満足のいくツールとは言えない状況でした。」(高橋)
このように従来の可視化ツールに運用面・機能面で課題があると判断したCTCでは、課題解決に向けて独自開発の可視化ツールに代わるソリューションを探すことにした。
経緯
お客様とCTCの両方に有用なHyper Billingの採用を決定
CTCでは、世の中にあるAWSクラウド対応のコスト可視化ツール、請求関連ツールを徹底的に調査し、機能や操作性を事細かく評価した。高橋によると、導入候補を3~4製品に絞り込み、入念な比較検討を行ったという。そうした選定作業を進める中、CTCが注目したのが「Hyper Billing」というツールだった。
Hyper Billingは、韓国を拠点に北米やアジアを中心にグローバルでクラウドMSP(マネージドサービスプロバイダ)事業を展開するMEGAZONE(メガゾーン)社が開発したセルフマネジメントツール。CTCとMEGAZONEは2019年よりクラウドビジネス領域での協業検討を開始、その中でも早い段階から候補に挙がったのがHyper Billingだった。
もともとMEGAZONE社が提供する請求代行サービスの利用者向けに開発されたHyper Billingは、BIツールに似た操作性でAWSの利用料金を可視化し、様々な軸からのコスト分析が可能となっている。複数のAWSアカウントにまたがった利用料金を容易に管理できるほか、ドリルダウン分析やクロス集計分析など動的にカスタマイズした画面上に分かりやすく表示するという機能も装備する。
「数多くのツールを評価しましたが、ほとんどのツールはお客様視点か、リセラー視点かのどちらかに片寄った機能しかありません。それに対してHyper Billingは、お客様の用途はもちろん、当社のようなリセラーの請求業務、あるいはコスト情報を使ったお客様へのコスト最適化提案にも使える機能を備えており、お客様にとっても当社にとっても有用であることが分かりました。そこで従来の独自ツールに代わり、Hyper Billingを採用することにしました。」(高橋)
選択
ビリングポータルの提供を開始、AWSを利用するお客様が使用可能に
CTCがHyper Billingを実際に導入したのは、2020年8月のことだった。AWSクラウドのビジネスを担当する部署がお客様への料金請求業務に使用すると共に、利用料金の明細を確認できる「ビリングポータル」をお客様向けに提供している。このビリングポータルは基本的に、CTCを通じてAWSクラウドを利用している全てのお客様が使用できるようになっており、CTCが推進するクラウドエコシステム 100 for AWSが提供する代表的なセルフマネジメントツールの1つという位置づけだ。
なお、CTCはHyper Billingをはじめ、Google Cloud Platform(GCP)やMicrosoft Azureを含むマルチクラウドサービスのリソースを一元管理するソリューションを展開するMEGAZONE社との戦略的パートナーシップをさらに強化するために、2022年4月にMEGAZONE社日本法人への出資を増資。現在はMEGAZONE社日本法人の株式の49%を保有する関係となっている。
効果
お客様のコスト削減を実現、CTCの請求業務も大幅に効率化
CTCが導入したHyper Billingは、AWSクラウドを利用するお客様にさまざまな導入メリットをもたらしている。
「お客様は、それぞれが所有するAWSのアカウントに紐づいた利用料金などの情報をHyper Billingの画面を通じて閲覧できるようになっています。Hyper Billingは、例えばデータベースのリソースIDという細かい単位でコストを可視化・分析を行うことができます。具体的にどのサービスにコストがかかっているのかという要因を調べたり、リソースを特定できるためコストの最適化に役立ちます。このリソースID単位で分析できる機能は、お客様からも非常に好評です。また、Hyper Billingは料金だけではなく、サーバの稼働時間を確認することができます。例えば、分析結果を参考にしてHyper Billingの自動化機能を活用し、業務時間外や休日にインスタンスを停止して大幅なコスト削減効果が得られたお客様の成功事例もあります。また、複数のアカウントを所有するお客様からは、全てをまとめてコスト管理ができるようになったことが便利だという声も多数寄せられています。」(朴木)
一方、お客様に対して料金請求業務を行っているCTCにとっての導入メリットもある。
「CTCの料金請求業務は従来、アカウントごとの利用料金を表計算ソフトにまとめてから算出しており、担当者3~4人が毎月1週間がかりで作業しなければならないような時間と手間のかかる業務でした。それがHyper Billingを導入してからは、全てのお客様のアカウントの利用料金を一括でCSVファイルにダウンロードするだけで請求金額が算出できるので、2人が2日間かければ作業を終えることができます。また、人手で作業していた際にしばしば発生していたヒューマンエラーもなくなりました。このような業務の効率化、作業品質の向上は非常に大きな効果だと考えています。」(朴木)
新AWSコスト可視化ツール(Hyper Billing)のご紹介
Webブラウザ経由で視覚的にAWS利用料をリアルタイムに参照頂けるサービス

今後の展望
将来的にはAWSクラウドを含むマルチクラウドへの適用も視野に
MEGAZONE社では現在、マルチクラウドのアカウント情報を統合管理する運用ツールの機能強化、ブラッシュアップを進めており、将来的にはこのツールの中にHyper Billingの機能を包含する計画だ。この機能にはCTCも注目しており、「将来的にはAWSクラウドを含めたマルチクラウド環境を利用しているお客様のコスト最適化を実現するセルフマネジメントツールの提供も視野に入れ、マルチクラウドを扱う部門と調整していく予定です。」(高橋)
CTCは、ハイブリッドクラウド化・マルチクラウド化が進み、運用・セキュリティ対策の高度化・複雑化が高まるお客様のIT環境を、オープンでシンプルかつセキュアな環境に変革する支援を「OneCUVIC」と位置付けて、その内容の拡充・強化を進めています。
このサービスソリューションに、AWSプレミアティア サービスパートナーのMEGAZONE社の持っているケイパビリティやオファリングをOneCUVICに組み合わせて、コスト効率・セキュリティ・運用性の高いクラウドの提供していきたいと考えている。
