株式会社デンソーの100%出資ITシステム子会社であるデンソーITソリューションズは、デンソーおよびグループ企業のためのプライベートクラウド環境“ALADIN(Attractive Landmark for All DENSO INfrastructure)”を構築・運用する。重要業務基盤として高度な信頼性、安定性が求められると同時に、増大する一方のデータ需要に対応するための容量拡大と運用管理負担の軽減を両立する必要があり、HDDベースのストレージからオールフラッシュ・ストレージへの転換を開始した。
課題と効果
- 課題
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- システムをできるだけ止めたくない(安定稼働と耐障害性)
- 老朽化更新作業をなくしたい
- データ移行作業をなくしたい
- 省電力化、省スペース化
- 効果
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- オールフラッシュ・ストレージの採用による性能向上、容量効率向上、省電力、省スペース
- Evergreen Storageによる老朽化更新作業の大幅な低減
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社デンソーITソリューションズ
- 設立
- 2001年
- 所在地
- 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地(株式会社デンソー本社内)
- URL
- http://www.dnitsol.com/
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株式会社デンソーITソリューションズ
ITサービス部 副部長
石田氏
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株式会社デンソーITソリューションズ
ITサービス部 IT基盤推進室
戸崎氏
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株式会社デンソーITソリューションズ
ITサービス部 運用改善1室 プロフェッショナル
中村氏
導入背景
デンソーITソリューションズが提供するプライベートクラウド環境“ALADIN”はVMwareESXによる仮想サーバの運用を前提とした仮想化基盤で、「アプリケーション実行用の仮想サーバの提供」と「データ保管用のストレージ領域の提供」を中核サービスとする。
当初は刈谷での運用だったが、その後災害対策強化の意味合いもあって関東にも遠隔サイトを準備し、両サイト間で遠隔レプリケーションを行なうようになった。現在では、関東圏でのユーザー企業の業務支援強化の一環として一部本番環境を関東サイトで稼働させるようになっており、アクティブ・アクティブ環境での運用体制に移行しつつある。
の初期導入以来、毎年更新・拡張を繰り返し、現在は第6世代目になっている。増大するデータ容量に対応し、毎年数百TB程度の容量追加が行なわれた結果、現在のシステムの総容量は数PBという規模に達する。さらに、からは初期導入時のストレージが保守切れのため老朽更新が必要となり、それに伴うデータ移行などの作業負担が課題として浮上してきた。
システム概要・導入効果
Pure Storage FlashArrayの導入経緯
ALADINでは、にFlashArray//m70R2-315TB×2台が、にFlashArray//X90R2-556TB×2台が、それぞれ年次の容量追加の際の新規ストレージとして選定され、導入された。2台のストレージは、本社(愛知県刈谷市)での運用と関東の両サイトに分散され、レプリケーション構成となっている。ALADINの責任者であるデンソーITソリューションズのITサービス部 副部長の石田 靖博氏は、「従来導入していた老舗のストレージベンダー製品に比べ、新興企業であるPure Storageには不安もあったが、ALADINとは別の限定的なシステムのためのストレージとしてPure Storage FlashArrayを導入、運用してみたところ、性能や使い勝手の面でも評価できた」ことで、ALADINにもPure Storageが採用されることになった。
ALADINの企画から要件立案、比較検討、機器導入まで全般的に担当する戸崎 佳孝氏は、「年に3回止める、という前提ではあるが、ユーザー企業からは『できる限り止めないで欲しい』『止まっては困るのでALADINに移行できない』という声が寄せられることもあって、止まらない、止める必要がない機器を選んだ」と語る。
同時に、老朽更新に関しては「作業開始から移行完了まで、期間としてはおよそ7カ月掛かっている」(戸崎氏)という状況だが、この作業をPure Storageのサブスクリプション“Evergreen Storage”を活用することでなくしてしまうことが可能になる点も大きなポイントとなった。Pure StorageのEvergreen Storageでは、データを保存しているメディア部分はそのまま、コントローラ部分を最新製品に更新することが可能なので、データのコピー作業を伴う更新は発生せず、コントローラの交換だけで最新モデルに更新でき、“サブスクリプションでストレージを活用する”ことができるのが特徴。戸崎氏は、こうしたベンダー側のアピールが正しいことを確認するため、実際にPure Storageが準備したデモ環境でのコントローラ交換作業を体験してダウンタイムゼロでのコントローラ交換が本当に出来ることや、実際のアクセスパターンに基づくテストプログラムによる性能検証なども行なった上で製品導入に踏み切っている。
運用管理面での評価
ALADINの運用面での担当者で、プロジェクト全体のサブリーダーでもある中村 文彦氏は、「良さを体感するのはこれから、という段階。Evergreenについては、交換時期はまだ先になるが、永年で対応してもらえるということで運用面ではかなりの安心感がある」という。管理ツールのインターフェイスや使い勝手もシンプルで分かりやすいとの評価だ。最新機能である“VM Analytics”や、Pure 1による予測型サポート、プロアクティブな対応に関しても、運用効率改善に貢献するものとして期待がかかる。
また、HDDからオールフラッシュ・ストレージへの移行の効果としては、故障発生率が格段に低下したことに加え、設置スペースの削減が可能になった点や、消費電力も削減できたことなど、大きな効果が得られている。
今後の展望
ALADINに対するユーザー企業各社のニーズは今後も右肩上がりで増大していくことが予想されるため、今後も毎年計画通りの増強を続けていく計画だ。しかし、「現状でも既に肥大化していることもあり、老朽化更新の負担も含め、運用管理負担をいかに軽減していくかを考えていくことが今後重要になってくる」(石田氏)と言う。パブリッククラウドの活用、ALADINとパブリッククラウドの連携も検討課題として浮上してきているが、現時点では具体的な姿は検討中とのこと。「将来的には、いかにクラウドを採り入れていくのか、が課題となってくる。」(石田氏)。
なお、デンソー本社では「世界市場から質・量・コストで最も優れた部品、資材、設備を開拓・調達し、『世界最適調達』を実現する。」ことを目指したオープンでフェアな調達活動を展開している。ALADINにおけるストレージ導入も基本的な考え方は同様で、「基本的に毎年毎年、毎回毎回の投資案件に対してしっかり要件を定義してRFPを行ない、公平に選定していく」(石田氏)と言う。同時に、CTCに対しては「CTCはマルチベンダーで提案して頂けるため、旬の、トレンドに合った製品の提案があるのがありがたい。提案の際にも、1つの製品だけではなく、CTCが複数製品でベンチマークした結果の比較データまで見せてもらった上での提案になるので、その点も助かっている。今後も、マルチベンダーという強みを活かした提案に期待している」(石田氏)と語る。同社の基本的な姿勢と、CTCのマルチベンダーで最適な提案を行なう姿勢が上手く噛み合っていると言えるだろう。
導入製品・ソリューション
- Pure Storage FlashArray//m70R2-315TB(2017年度)
- Pure Storage FlashArray//X90R2-556TB(2018年度)