事例

日立建機株式会社 様

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3DCADを担う物理クライアントの仮想化を推進

ワークステーションの仮想化で、オフィススペースの効率化と管理負荷の軽減へ

日立建機株式会社は、油圧ショベルを主力とする建設機械や、鉱山用ダンプトラックなどの製造・販売からアフターサービスをグローバルに展開する総合建設機械メーカーだ。同社ではCTCの支援のもと、設計部が活用する3D CADのクライアント環境をサーバ上に仮想化するVDI(Virtual Desktop Infrastructure)化を推進。デスクトップPCと3D CAD用ワークステーションのシームレスな統合を進め、開発効率の向上や管理の一元化による迅速な対応、そして負荷軽減などを実現した。

課題と効果

課題
  • 共用ワークステーション設置スペースの拡大
  • 各自のPCと3D CAD環境が並立
  • クライアントPC管理の煩雑化

物理ワークステーションの仮想化

効果
  • スペース効率の向上
  • PCとワークステーション間でシームレスな処理を実現
  • 運用管理負荷の軽減

導入事例インタビューデータ

会社名
日立建機株式会社
所在地
東京都文京区後楽二丁目5番1号
創業
1970年
URL
http://www.hitachi-kenki.co.jp/新しいウィンドウで開く
  • 須賀田 稔明 氏

    日立建機株式会社

    開発支援センタ DE推進部 主任技師

    須賀田 稔明 氏

  • 田端 聡 氏

    日立建機株式会社

    開発支援センタ DE推進部 技師

    田端 聡 氏

導入背景

人員が増える設計フロアで、物理ワークステーションの改革が急務

日立建機株式会社では、3D CAD用ワークステーションで形成されたデジタルデータを活用して、干渉や機構、剛性、組立性などを事前検証。実際の製品ができる前に問題点の芽を摘んでおくことで、開発期間の圧縮や効率アップ、設計精度向上の実現を加速させている。

今回の案件を主幹した同社 開発支援センタ DE推進部 主任技師 須賀田 稔明 氏はその役割を次のように語る。

「私たちは3D CADの活用支援とともに、形成された開発データを下流工程に持ち回ることによって、生産準備や組み付けなどの作業性、治具の検討など、製品ライフサイクル全体をカバーしたものづくり体制をサポートしています。」

同社が、3D CADのVDI化に踏み切った最大の要因は、2014 年4月にWindows XPのワークステーションがサポート終了を迎えることだった。設計者が3D CADを駆使する400台のワークステーションのうち、実に200台ほどがWindows XP機だったからだ。また、それらは3D CADの共用ワークステーションとして、各自が利用するデスクトップPCとは別に設置されていた。しかし、ビジネスの拡大を背景に、ますます陣容を広げる設計部の中で、今後その設置スペースや管理負荷が増大していくことは避けられない。そこで、Windows XPベースの物理ワークステーションを全てリプレースするのではなく、サーバ上に仮想化するVDI化の検討が進められたのである。

システム概要

3D CADをめぐりVDIの実現へ、スピーディに構築が進む

物理ワークステーションのVDI化について、その経緯を同社 開発支援センタ DE推進部 技師 田端 聡 氏は次のように語る。

「他社の製品でサーバ上に複数のクライアント環境を構築し、物理ワークステーションの削減を図るなどの施策にも取り組みました。しかし、パーツ単位ならまだしも、製品のフルモデルとなると、思うようなグラフィック性能はもともと期待できませんでした。そこで、シスコシステムズ合同会社のセミナーに参加。
Cisco Unified Computing System(UCS) C240 M3ラックサーバをプラットフォームに、NVIDIAのグラフィックボードやCitrixのソリューションを組み合わせることによって、3D CADの高度なグラフィック機能の仮想化が、確かなコストパフォーマンスで実現できることがわかりました。まさに渡りに船という思いで、VDI化に舵を切ったのです。」

こうして社内の稟議も経て、2014年1月にシステムを発注。翌月の要件定義フェーズからは、CTCがSIパートナーとして選ばれた。

「CTCは、3D CADの活用や解析システムの共同開発・運用など、古くから私たちとのプロジェクトを通じて、当社の業務やその課題を熟知していました。またシスコシステムズとともに、Cisco UCS C240 M3をマザーマシンとしたNVIDIAやCitrixとのベータ版開発から参画しており、そのノウハウも豊富であったことから、今回SIパートナーとして支援してもらうことになりました」(須賀田氏)。

一方、新たなプロジェクトがうまくいくかどうかは、万全の事前準備に負うところが大きい。

「本格的な構築に先立って、実機のフルモデルデータでベンチマークを実施。設計部に常駐する開発支援センタのメンバーを交え、ユーザー目線による評価を行いました。その結果、従来の物理ワークステーション上の処理と遜色ないレスポンスを確認。即戦力化が図れるという確かな手応えを得ました」(田端氏)。

こうしてCTCの支援を受けながら、要件定義や設定シート作成、仮想基盤の構築などを推進。短期間ながらも凝縮した構築努力が功を奏し、Windows XPのサポートが切れる2014年4月には無事カットオーバーを迎えることができた。

導入効果

今回の成果をもとに、更なる仮想化環境構築を目指す

同社では、今回試行的な評価の意味を含めて、200台あったWindows XPマシンの約半分を物理ワークステーションにリプレース。残る約100ユーザー分のVDI化を図った。そのプラットフォームとなるCisco UCS C240 M3は、開発部が控える土浦工場に5台、ホイールローダー開発を担う龍ケ崎工場に1台が配備された。まだカットオーバーから日は浅いものの、現在既に様々な導入効果が現れている。

約100ユーザー分の物理ワークステーション環境をVDI化

「たとえば、従来設計資料を作成する際などには、3D CAD専用ワークステーションのデータを、各自のデスクトップPCに再度入れる必要がありました。しかし、仮想化によって各自のデスクトップPCから3D CAD環境に入っていけるので、画像なども仮想ワークステーションからキャプチャーしてそのまま活用することが可能になり、生産性が格段に向上しました」(須賀田氏)。

直近のコスト面だけを見れば、仮想化と物理ワークステーションの導入はそれほど変わらない。しかし、物理サーバ1台ずつに対するセットアップやオンサイトによるサポート、端末管理の一元化など、その運用管理負荷やそれに関わるインビジブルコストが大きく削減された点は特筆すべきだという。更に、それぞれのワークステーションのリソース配分の平準化や最適化が図れ、今後のバージョンアップなどにもサーバ側で一斉に対応することができる点も大きな魅力だ。

今後の展望

「また、今後拡大する中国市場向けの開発機種に関しては、実際の市場を熟知している現地での開発を進めています。これまで、3D CADデータは保存の度に自動的に暗号化を図るなどのセキュリティ対策を築いてきましたが、今後はVDI化することでデータを手元のPCに持ってこさせない強固な仕組みが実現可能ですね」(田端氏)。

「そのためにも、運用や更なるシステムの構築や拡張に向けて、今後ともCTCとの連携を強めていきたいですね」と須賀田氏は続ける。

今回3D CAD環境のVDI化に成功した同社は、複雑な画像情報を含む大きなデータを、物理クライアントやロケーションに縛られることなく、自由にハンドリングできるようになった。これらの成果をベースに同社では、今後もワークステーションの仮想化比率を高めていくことで、3D CAD環境の更なる効率化を図っていく。

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