事例・コラム

ネットワークインフラエンジニアから見た5Gシステム

第1回 5Gのベースになった4Gシステム

更新

5Gは超高速・大容量、超低遅延、多数同時接続というメリットがたびたび説明されています。今までと何が変わるのでしょうか。

はじめに

、米国のVerizon社が「5G Home」というFWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)サービスを開始しました。また、日本では現行の移動体通信事業者3社が夏に5Gのプレサービス開始を、さらに新規参入の1社を加えた4社がの東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催前までに5Gの商用化を一斉に目指すことを発表しました。これから5Gのサービス化実現に向け、設備の本格的な検討が始まると考えています。

4Gネットワークの概要

そもそもスマートフォンはどう繋がっているのか。5Gの解説に先立ち、今回は、5Gのベースとなった4Gのアーキテクチャについて説明します。図1は、無線技術の標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)で定義された4Gのアーキテクチャをまとめた図です。

図1:4Gのアーキテクチャ

4Gのネットワークは、高速通信規格LTEを提供するための無線ネットワークE-UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network:無線ネットワーク)とLTEのアクセス網を収容するEPC(Evolved Packet Core:コアネットワーク)から構成されています。

4Gアーキテクチャの主な技術ワードは以下の通りです。

  • UE(User Equipment:スマートフォンやタブレットなどの端末)
  • E-UTRAN(無線ネットワーク)
    • eNodeB(Evolved Node B:無線基地局)
  • EPC(コアネットワーク)
    • MME(Mobility Management Entity:UEの制御信号のゲートウェイ)
    • SGW(Serving Gateway:ユーザーデータのゲートウェイ)
    • PGW(Packet data network Gateway:外部ネットワークに接続するためのゲートウェイ)
  • EPCに接続されるその他の機能
    • PCRF(Policy and Charging Rule Function:優先制御や課金のルールを設定)
    • HSS(Home Subscriber server:ユーザー情報のデータベース)
    • OCS(Online Charging System:オンライン課金システム)
    • OFCS(Offline Charging System:オフライン課金システム)

通信の仕組みは、端末であるUEが発信、受信することでeNodeBに繋がり、LTEコアネットワーク設備の一つであるMMEを経由して端末の認証や位置情報の登録を行います。登録が完了するとUE-eNodeB間、eNodeB-SGW間、SGW-PGW間でGTP(GPRS Tunneling Protocol)でトンネリングされてデータ通信が可能となります。なお4Gでは全てのデータ通信がIPパケット化されて行われます。この一連の通信が行われて初めてスマートフォンでネットワークを使用することができるようになります。

続いて4Gのネットワークを接続・分岐するノード間を繋ぐ移動体ネットワークについて解説します。全国に多数設置されたeNodeBは離れた場所にあるEPCに繋がらなければなりません。そのための移動体ネットワークは広域で規模も大きく複雑です。

図2:移動体ネットワーク

図2は実際の移動体ネットワークのイメージで、3GPPが定義している4Gのアーキテクチャとマッピングさせています。図1に記載はしていませんが、eNodeBとSGWの間には大規模なIPネットワークが存在します。実際のネットワークの実装に準じ、ネットワークを機能ごとにeNodeB、Backhaul、Backhaul aggregation IP Edge、IP Coreの4つに分けて解説します。

eNodeB

一般的に無線基地局と表現されています。現状のインプリメントは、無線部分と制御部分が分離されています。無線部分はRRH(Remote Radio Head)、制御部分はBBU(Base Band Unit)で構成されています。効率よく、広範囲を無線ネットワークでカバーをしようとすると、大きなアンテナで広範囲をカバーして、電波の届きにくい場所や、端末がより密集しやすい場所に小型のアンテナを配置することが必要になります。容易に実現するために、無線部分と制御部分を独立して個別に増強しやすいようにしています。RRHとBBU間の接続には、CPRI(Common Public Radio Interface)と呼ばれる、標準化された光インターフェースが使われています(通称Fronthaulと呼ばれています)。

Backhaul

Mobile Backhaulと表現されることもあります。多数の基地局を集約してIP Coreと光ネットワークなどの大容量・高信頼性の広域伝送網で繋ぎ、L2やL3のパケット・トランスポート技術を利用してデータを転送します。近年のモバイルデータトラフィックの爆発的な増加を受けて、更なる大容量化、柔軟な可用性が求められています。

Backhaul aggregation IP Edge

Backhaulを集約しIP Coreに中継するIPネットワークです。多数のBackhaulを集約するため大容量プロバイダエッジルータが導入されます。また、このネットワーク内では高機能なトラフィックエンジニアリングを実現するために、ルーティングプロトコルとしてMPLS(Multi-Protocol Label Switching)が使われるケースが多いようです。MPLSでは帯域等を属性にして通信制御を行うことや、ノード障害から高速な復旧が可能です。

IP Core

Core Networkと表現されることもあります。EPCを含む移動体ネットワークのコア部分です。UEから全てのアクセスに対し認証、移動制御、ベアラ管理、QoS制御、外部ネットワークへのゲートウェイ等の様々な機能を提供しています。

移動体通信の高速化を目指して導入が進んだ4Gですが、LTE加入数の増加と動画伝送等によるトラフィック急増への対応が課題となってきました。このような背景の中、更なる高速大容量化を実現するCarrier Aggregationサービスが開始されています。ところが今後はIoT/M2M等、様々なモノをインターネットに接続するために、今まで以上に同時多接続への対応が要求されています。これらの様々な要求を解決する次世代の技術として5Gが期待されています。

4Gの課題

高速大容量化を目指してきた4Gですが、モバイル通信を利用する新たなユースケースが生まれることで様々な要求と課題が出てきました。ここではトラフィックと運用の課題をご紹介します。

トラフィックから見た課題

4Gは高速大容量通信の提供を目指していますが、回線の混雑状況や通信環境によって理論値と実効速度に大きな隔たりが出ることから、各社は総務省が定めたガイドラインに基づき平均値を公開しています。

しかし近年、従来からのモバイル端末に加えてIoT/M2M等のように通信特性が大きく異なるユースケースがネットワークに接続されるようになりました。これにより通信速度、低遅延、膨大な端末数分のシグナリングやセッション管理への対応が必要になってきました。その結果、EPCの設備増設のコスト増(拡張や多面化)を強いられることが課題の1つとして指摘されています。

運用から見た課題

ネットワークトラフィックの設計は、帯域要求に合わせてネットワークを定期的に増強しています。この増強作業は、かなり複雑で手間がかかるため、大きな課題となっています。増強作業ではまず、ネットワークのどこにボトルネックがあるか定期的に情報収集する必要があります。増強する範囲が確定したら、モジュールレベルで増強できるのか、新しい機材を追加するのかを決めます。次に、導入する作業を決め手順等を設計します。導入作業は、無停止かつ他の部分に影響を及ぼさないことが必須なため、シミュレーションして検討する必要があります。増設の要否を判断し、増設作業を実施し、適正な結果を得たと判断する作業毎にかなりのリソースと費用が掛かります。現状でも、運用を自動化するための取り組みを行っていますが、ネットワークのソフトウェア化と仮想化の進展が期待される5Gでは更に本格的な自動化が必要になってくると思われます。

次回

今回は5Gのベースとなる現行の4Gの概要についてネットワークインフラエンジニアの視点で解説しました。次回は3GPP関連の情報や、5Gネットワークを自動化するための仕組みなど更に各項目を掘り下げながら解説していきます。

著者紹介

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
情報通信第2本部 システム技術統括部
課長 北島 雅之
エキスパートエンジニア 宮脇 良隆

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