事例・コラム

ネットワークインフラエンジニアから見た5Gシステム

第2回 3GPPとは
- 5G標準化状況 -

更新

3GPPの概要と5Gの標準化状況、SA2, SA5で検討されている仕様について解説します。

はじめに

CTCは、から3GPP会合に参加しています。移動体通信事業者のコアネットワークの構築に関わっていることもあり、SA2(「3GPPとは」で解説します)というWG (Working Group)を中心に参加していますが、最近はネットワークスライスのマネジメント方法を検討しているSA5(「3GPPとは」で解説します)というWGにも参加しています。これから3回にわたって3GPPの概要と5Gの標準化状況、SA2, SA5で検討されている仕様について解説していきたいと思います。

3GPPとは

3GPP (3rd Generation Partnership Project) は、その名前が示すように第3世代携帯電話システム(「3G」)の国際標準仕様を策定することを目的として、に各国・地域の標準化機関によって設立されました。設立当初は、ヨーロッパ、日本、米国、韓国の標準化機関から構成されていましたが、その後、中国、インドの標準化機関も加わり、現在は以下のメンバーから構成されています。

  • ETSI(European Telecommunications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)
  • ARIB(Association of Radio Industries and Businesses:電波産業会(日本))
  • TTC(Telecommunication Technology Committee:情報通信技術委員会(日本))
  • ATIS(Alliance for Telecommunications Industry:電気通信標準化アライアンス(米国))
  • TTA(Telecommunications Technology Association:電気通信技術協会(韓国))
  • CCSA(China Communications Standard Association:中国通信標準化協会)
  • TSDSI(Telecommunications Standards Development Society:インド電気通信標準化協会)
図1:3GPPを構成する標準化機関

図1:3GPPを構成する標準化機関

3GPP会合に参加するには、上記標準化機関のいずれかに所属した上で出席する必要があります。日本企業の場合、ARIBもしくは、TTCのメンバーとして出席することになりますが、CTCはTTCのメンバーとして3GPP会合に出席しています。
余談ですがは設立から20年目にあたるので12月に開催される会合では、20周年記念のイベントが開催されます。

3GPPでの仕様検討は、TSG (Technical Specification Group)とその配下のWGで行われています。その構成について解説すると、現在、TSGは分野別にRAN (Radio Access Network), SA (Service & Systems Aspects), CT (Core Network & Terminals)の3つに分かれています。TSG RANでは無線と無線アクセス網の仕様策定、TSG SAではシステム全体の要件やアーキテクチャに関する仕様策定、TSG CTでは主にコアネットワーク内と端末、外部ネットワークとの間で使われるプロトコルの策定を行っています。「策定」と書きましたが、実際の「検討」は各TSG配下にあるいくつかのWGで更に細分化された分野ごとに仕様の検討が行われ、TSG会合は各WGで合意された仕様を承認する場になっています。これが「(3GPP)プレナリー」と呼ばれる会合で、年に4回(3月、6月、9月、12月)、3つのTSGが集まって開催されます。に仕様策定が完了した「5G標準仕様」は、6月に開催されたプレナリー会合で承認されたものです。

現在、TSGとその配下にあるWGの構成は以下のようになっています。

図2:TSGとWGの構成

無線関連の仕様検討は全てRAN配下のWGで行われます。特に、5Gの仕様検討で最も注目を集めたのは無線のレイヤ1仕様を検討するRAN1ではないでしょうか。多い時には500人近くの人が会合に出席したこともあるようです(CTCが出席しているSA2で150~200人、SA5の40人前後と比較すると、その出席者数の多さが伺えるかと思います)。一方、CTの各WGでは、ノード間の通信で使われるプロトコルの詳細仕様が検討されます。現在、CT4では5Gコアネットワークのユーザプレーンプロトコルの検討が行われており、1つの候補としてSRv6が提案されています。長年“GTP (GPRS Tunneling Protocol)”を使ってきた3GPPがどのような結論を下すのかが注目されます。
これらのWGの中で、CTCはコアネットワークのアーキテクチャの検討を行うSA2と、ネットワークスライスを含めたネットワークの運用・管理仕様を検討しているSA5の会合に主に参加しています。

3GPPでの標準化の流れ

3GPPでの標準化は、「ステージ1」、「ステージ2」、「ステージ3」という3つの段階に分けて進められます(これは、元々はISDNの標準化を行う過程で当時のCCITT-現在のITU-T:国際電気通信連合 電気通信標準化部門、固定通信分野の標準策定を担当-のI.130という勧告で規定された手法です)。ステージ1では、新たに開発する機能についてユースケース(利用シーン)を検討し、その際に求められる要件を規定します。ステージ2では、ステージ1で規定された要件を満たすようなアーキテクチャ(システムで必要となる機能、その機能を実現するためのノード群とその配置等)及び、各ノード間でどのようなメッセージをやり取りするかを規定します。ステージ3では、ステージ2で規定されたメッセージについて、具体的なプロトコルレベル(メッセージフォーマットやパラメータ)に落とし込みます。
コアネットワークに関しては、ステージ1はSA1、ステージ2はSA2、ステージ3はプロトコルが使われる区間に応じてCTの各WGで検討、という流れになります。5Gの場合、まずSA1でユースケースの検討が行われ、その結果がTR 22.891というドキュメントにまとめられました。その後、ユースケースを基に要件が抽出され、TS 22.261に“Service requirements for the 5G system”としてまとめられました(TR 22.891は“Technical Report (TR)”という位置づけで、「標準仕様」ではありませんが、3GPPが5Gでどのような利用の仕方を想定していたのかをうかがい知ることができます。3GPPのドキュメントは、正式な仕様に限らず、各会合に提出されたドキュメントも含めて誰でも閲覧することができるので興味ある方は読んでみてください)。
SA2ではこれを基に5Gコアネットワーク (5GC)のアーキテクチャの検討が行われ、5GCアーキテクチャ、コールフロー、ポリシー・課金制御アーキテクチャの3つの仕様が作られました。更に、CTの各WGでは5GCで使うプロトコルの検討を行いました。これらを表にまとめると以下のようになります(ステージ3のドキュメントは非常にたくさんあるので、CT1/3/4作成のドキュメントから1件ずつ抜き出しています)。

図3:5Gコアネットワーク関連ドキュメント

“コラム:3GPPドキュメントのシリーズ番号”

3GPPで作成されるドキュメントは、分野ごとにシリーズ番号が割り振られています。そのため、シリーズ番号を見ると、例えば、それが要件を定義した文書なのか、アーキテクチャを規定した文書なのか、プロトコルの詳細について記述した文書なのかが分かります。3G以降について規定したドキュメントでは、以下のシリーズ番号が使われています。

図4:3GPPドキュメント シリーズ番号

5G標準化の流れ

第5世代移動通信システムの標準化にはITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)も関わっており、「IMT-2020」という名称で標準化が進められています。正確には、ITUの無線部門であるITU-R (ITU Radiocommunication Sector)がIMT-2020に求められる要求条件を作成し、これを各標準化団体に対して、要求条件を満たすような技術の提案を依頼します。3GPP等の標準化団体では、ITU-Rの要求条件に基づいて仕様を策定し、これをITU-Rに提案します。各標準化団体から提出された提案は要求条件を満たすかどうかの評価が行われ、要求条件を満たすと判断されると、IMT-2020として勧告が発行されます。

図5:IMT-2020標準化の流れ

図5:IMT-2020標準化の流れ

ITU-RでのIMT-2020標準化スケジュールは以下のようになっています。

2016年から17年にかけて要求条件 (Requirements)が作成され、提案の受付 (Proposals)が17年の終わりから19年の半ばにかけて行われます。その後、提案に対する評価 (Evaluation)が行われた後、実際の勧告 (Specification)としてまとめられます。

図6:出典 ITU-R, ITU towards “IMT for 2020 and beyond

図6:出典 ITU-R, ITU towards “IMT for 2020 and beyond”

3GPPでの5G標準化スケジュール

3GPPでの5G標準化は、Phase 1と2に分けて標準化されます。Phase 1では早い時期(当初はを想定)での商用展開を可能とするために、5Gの基本的な機能、具体的には、eMBB (enhanced Mobile Broadband)と呼ばれる超高速通信向けの仕様を中心に規定することとしました。一方、Phase 2では、Phase 1で規定された機能に加えて、IMT-2020の要件を満たすようにmMTC (massive Machine-Type Communication)と呼ばれる多数のIoT端末向けの仕様と、URLLC (Ultra-Reliable and Low Latency Communication)と呼ばれる超高信頼・低遅延通信向けの仕様が追加されます。この、eMBB, mMTC, URLLCという用途の分類は、ITU-Rが作成したドキュメント「Recommendation ITU-R M.2083-0, IMT Vision - Framework and overall objectives of the future development of IMT for 2020 and beyond」で定義されています。

5Gの標準化に関しては、3GPPでは5G Phase 1を「リリース15」、5G Phase 2を「リリース16」として規定します(「リリース」とは、ある一定の期間内に、新たに開発する機能をまとめたパッケージのようなものです)。この3GPPでの5G標準化スケジュールと、先ほどのITU-RでのIMT-2020の標準化スケジュールを重ねると以下のようになります。最終的に、3GPPはリリース16の仕様をITU-Rに対してIMT-2020の候補技術として提案をします。

図7:3GPP 5G標準化スケジュール

下の表は、各リリースにおけるステージ1~3の仕様凍結スケジュールを抜き出したものです。

図8:リリース15、16における各ステージの仕様凍結スケジュール

図8:リリース15、16における各ステージの仕様凍結スケジュール

なお、リリース15の仕様策定はで一旦完了していますが、一部「オプション4, 7」と呼ばれる5GCとRANの接続方式 (5G architecture option)の仕様策定が終わっておらず、これらについては、“Release 15 late drop”としてまで仕様策定が続けられます。

  • 2018年12月のTSG RAN会合で、Release 15 late drop、リリース16(図7,8のステージ3に相当)の双方とも仕様凍結を3ヶ月後ろ倒しすることが発表されています。
図9:5G architecture option (3GPP TDoc RP-161266を基に作成)

図9:5G architecture option (3GPP TDoc RP-161266を基に作成)

先ほどの表からも分かるように、SA2ではリリース15の検討がに終わり、現在はリリース16に向けた新たな機能の検討をStudy Item(新たな機能に関する仕様を策定する前に、課題とその解決案について検討を行うフェーズ)として行っています。Study Itemはいくつもあるので、その中から5G phase2向けの追加機能と、リリース15で5GCに新たに導入された機能をさらに拡張する技術を以下にご紹介しておきます。

図10:SA2で現在検討中のStudy Itemの一部

Study Itemで新たな機能に関してその実現方法が合意に至ると、実際の仕様として策定する作業に移ります。上に挙げたStudy Itemはにはリリース16の新たな機能として仕様に盛り込まれるものと予想されます。

次回

次回は、SA2で仕様が策定された5GC(5Gコアネットワーク)のアーキテクチャについて解説します。

著者紹介

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
情報通信第2本部 システム技術統括部
エキスパートエンジニア 高橋 智彦

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