Technical Report
ロボット社会を支えるシステムインテグレータの役割
人工知能やIoTと共にロボットの活用は「第4次産業革命」の中心を占め、その企業利用が今注目を集めています。
ロボット活用社会の到来に向けた背景や課題について解説します。
注目が集まる非産業用ロボット
非産業用ロボット(サービスロボット)と呼ばれる人型ロボットや対話型のコミュニケーションロボットは、業務の効率化やカスタマーサービス向上の目的で店舗や商業施設での活用に注目が集まっています。
その背景には日本を代表する国々で少子高齢化に伴う労働力の低下が懸念され、特に医療や介護分野での人員不足が顕著になるとの予想があります。日本は他国に先駆け高齢化社会を真っ先に迎える課題先進国であり、国内での高齢化への対応が中国、シンガポールなどの国々にも展開できるものとして期待されています。
加えて、地震に代表される自然災害が多い日本では、災害対策にロボットを活用するという考え方も普及しています。
ロボットブームの到来
今述べた分野でのロボット活用への期待は近年に出てきたものではありません。ただ、バッテリーが重過ぎて筐体が対応できない、充電も持続せず長時間の使用には不向き、材料や部品が高価で大きいなどの理由で実用に堪えるロボットはほとんど存在しませんでした。
昨今、スマートフォンに代表されるような情報端末/コンピュータの小型化及び省電力化がバッテリーを含めて実現されています。その普及に伴ってロボットが使用する各部品の製作コストも下がっており、各種のロボットが従来の高価なものからより身近なものへと革新を遂げています。身近なものの代表がロボット掃除機やロボット玩具であり、一般家庭へも徐々に浸透して、日常でロボットに触れる機会がますます増えてくるでしょう。
ロボット性能を向上させるAIとIoT
第3次人工知能(AI)ブームの到来は、ロボットにさらなる変化を促しています。自ら学習し行動する自立型ロボットの登場です。周囲の状況について学習を深め、画像・音声を含む認識の精度を高める「ディープラーニング」の活用でロボット自身の能力が向上してきており、より高度な処理が可能になりつつあります。
さらにインターネットの高速化やクラウドサービスの普及、モノとモノがネットワークにより結びつけられるIoT(Internet of Things)技術の台頭も、ロボットがより高度な動作を行うことを可能にしています。従来は単独で動いていたロボット同士が、相互に連携した動作を行うこともできるようになりました。Webサービスに代表される各種クラウドサービスとも連携し、様々なシステムの一部として機能することも可能です。
ロボットを使用したサービスの課題
一般的にロボット技術は以下のような複数の要素技術から成り立っています※1。
- 人工知能
- センシング・認識技術
- 機構・駆動・制御技術
- OS・ミドルウェア
- 通信技術
- 安心安全評価・標準
しかし、ロボットを活用してサービスを提供するには、要素技術以外にも多くの課題があります。
①ロボットの価格
低価格化が進んでいるとはいえ、本体とその保守料や通信料などを合わせると数十万~数百万するサービスロボットが主流です。そのためロボット単体では費用対効果を出すのは難しいのが現状です。
②ロボットごとに異なる開発環境
ロボットごとに開発環境(プログラミング言語や動作プラットフォーム)が異なるため、複数種類のロボットを連携させたロボットサービスを提供する場合、それぞれのロボットの開発手法を学習する必要があります。
③運用保守
一般的に、サービスロボットは産業用ロボットに比べてまだまだ動作が不安定です。品質を担保できるロボットサービスを提供するためには、ロボットの故障や不具合を検知し、迅速に対応できる仕組みが必須となります。しかし、現在ではそういった仕組みや体制が十分に整っているとは言えません。
- ロボット革命実現会議(首相官邸)が2015年1月23日に発表した「ロボット新戦略」を参照。
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