CTCグループでITライフサイクル全般に対応
データセンター移転は、極めて大きなリスクを伴う。小さな不注意や連絡ミスが、システムトラブルにつながり、ビジネスを停止させてしまう。エンドユーザーには移転を意識することなく、移転を終了してしまうのが理想だ。そこには、ベンダーの深い経験とノウハウが不可欠となる。
この理想に近いデータセンター移転を、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は自社「データセンター移転サービス」で実現した。約100システム、約150ラック、システム機器1000台もの大規模な作業をビジネスに影響することなく、計画どおりの完全な成功に終わらせた。
課題と効果
- 課題
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- 極めて大規模なデータセンター移転
- ビジネスに影響を与えることなく移転
- データセンターファシリティの煩雑な管理
データセンター移転実施
- 効果
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- エンドユーザーに影響を与えることなく移転
- システム担当者も最小限の負荷で移転
- より柔軟で拡張性の高いデータセンタリソースの実現
- データセンターファシリティの最適化
導入事例インタビューデータ
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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
データセンター事業グループ DC営業本部 アウトソーシング営業第1部 第2課 課長
秋山正光
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シーティーシー・テクノロジー株式会社
ネットワークエンジニアリング部
墫 洋介
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シーティーシー・システムオペレーションズ株式会社
オペレーションサービス第2部
野口 友和
導入背景
より高いデータセンターリソースを求めて
CTCは2006年10月、旧CTCと旧CRCが経営統合して誕生したIT企業である。
旧CTCは商社系のシステムインテグレーターとして、欧米の最新技術をいち早く日本に紹介。リーディングカンパニーとして、日本のオープン化を牽引してきた。一方旧CRCはデータセンターサービスを中心としたシステム運用・保守において、国内屈指の規模と技術力を誇っていた。
この2社が経営統合によりひとつになり、コンサルティングから製品の調達、インフラ構築からシステム開発、データセンターの運用・保守まで、ITライフサイクルの全フェーズを深く、広くサポートできる企業となった。
その新生CTCが、統合後2年を経て自社システムのデータセンターを移転。「背景には、今後必要となるシステム規模において、現状データセンターのリソースが不足していたことがあげられます。さらに、ランニングコストの削減、次世代IT基盤に向けた環境整備も目的です」と、CTC データセンター事業グループ DC営業本部 アウトソーシング営業第1部 第2課 課長 秋山正光 は語る。
それまでサーバ類を置いていた都心型データセンターは利便性は優れているものの、スペースなどに限界があった。そこで、郊外型データセンターへの移転を検討したのである。
システム概要
4回に分けてリスクを分散
2007年夏頃から、データセンター移転の検討を開始。だが、その規模はあまりに大きい。全100システムでサーバ・ストレージなどのシステム機器台数は1000台にも及ぶ。現状使用しているラック数は約150台であった。
大前提として、エンドユーザーやビジネスへの影響は最小限にしなければならない。もちろん事故は許されない。そこで、情報システム部とデータセンター事業グループで協議した結果「統廃合等システムへは一切手を付けない」「2008年中、4回に分けて移転する」の方針が固まった。
移転を実行するためのプロジェクトチームが2008年3月に発足。メンバーは上記CTCの情報システム部とデータセンター事業グループ、さらにシステムの保守・運用を担当しているシーティーシー・テクノロジー株式会社(CTCT)、オープン系システムのインフラ運用サービスを提供しているシーティーシー・システムオペレーションズ株式会社(CTCSO)で構成され、その数は70名に及んだ。
4回のスケジュールは以下のとおり、
- 第1フェーズ 7月19~21日 シンクライアントSunRayなど
- 第2フェーズ 9月13~15日 オフィスシステムeWorkなど
- 第3フェーズ 11月1~3日 メールシステムeSocksなど
- 第4フェーズ 12月29~31日 DMZ関連
それぞれ会社の3連休を当て、最初の2日間が作業日、残りの1日が予備日であった。
綿密な体制図と連絡網
「関係者の数が膨大になるため、体制図を作成し、連絡系統も綿密に作成するなどの準備を徹底的に行いました」と、実行部隊となったCTCT ネットワークエンジニアリング部 墫 洋介(はなわ・ようすけ)は強調する。「システム担当者を一人ひとり会議室に呼び、必要な準備や移転当日の動きを詰めていきました」と、CTCSO オペレーションサービス第2部 野口 友和も付け加える。
例えば第1フェーズの移転は、7月19日(土)午前0時から作業は始まっている。深夜に旧データセンターに集合して、対象となるシステムの電源を落とし、配線を抜き、ラックから取り外していく。「システムはすべて二重化されています。その片側だけの電源を落として持ち出します」(野口)。
取り外したサーバをトラックに積み込み、新データセンターへ運搬する。これを新データセンター側で受け取り、指定のラックに収容していく。配線後、電源を入れ、システムを稼働。こちらを本番系に切り替え、オフィスから正常にアクセスできることを確認する。
この後に、旧データセンターでは残っていた片側のサーバの電源を落とし、配線を外して、新データセンターへ運搬する。それを新データセンター側で受け取り、同じように設置して稼働。今度はこちらを本番に切り替えて、オフィスからアクセスできることを確認する。
システム数が多いため、この第1フェーズではトラックが4回往復している。最後のシステムの確認終了が20日23時。それでも、予備日を使うことなく、作業は成功裏に終わった。
導入効果
運用しやすいよう配線も見直す
「作業者の負荷のバラツキなど、細かな運用上の問題はありました。しかし、ビジネスにはまったく影響を与えることなく終わり、大成功といっていいでしょう」と、秋山は誇らしげに語る。
反省会を開き、第2フェーズ、第3フェーズへ進むにつれ、作業は洗練されていった。
そして最後の第4フェーズも無事に終了。「12月30日にネットワークの切り替えが完了しました。社員の皆様には数分のネットワーク停止が4~5回は発生するとアナウンスしていましたが、数秒レベルの停止で済みました。年末の深夜ですが、CTCはワールドワイドで作業している方がいるものですから」とCTCSOの野口は振り返る。
また、墫は「今回の移転ではシステムには直接手を加えていませんが、サーバの位置や配線は運用管理がしやすいように見直ししています。ずいぶんきれいな配線になりました」と語っている。
今後の展望
新たなノウハウでサービスを充実
これほど大規模な移転はCTCとCRC統合以来、初めてのことである。それが、業務に支障を与えることなく終えることができた。また、システム担当者の負荷も最小限に抑え、日常業務への影響も軽減している。
「これだけの大規模なデータセンター移転をグループ内だけで実行できるのは、国内ではCTCぐらいのものでしょう。データセンターとしては、この実績やノウハウを内外に知らしめて、お客様へのサービス充実を目指したいと思います」と、秋山は抱負を語る。
今回の移転で、CTCはこれからのビジネス飛躍の土台を築きあげることができた。そして、今回の移転がデータセンター移転サービスの完成度を示すものであり、その鮮やかな成功事例となっている。