東日本を襲った未曾有の大震災から2ヶ月が過ぎた今、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)エンタープライズビジネス第3本部本部長の鳥越浩嗣は、シーメンスPLMソフトウェア日本法人社長の島田太郎氏が発した「こんな時だからこそ、復興ではなく、全く新しいものを創るべきではないでしょうか。この危機をチャンスにつなげるお手伝いをしたい」という言葉に大きくうなずいた。
今だからこそ、復興ではなく全く新しい仕組みづくりを!
そして、鳥越が続ける。「今日訪問したお客様も全く同じことをおっしゃっていました。平時に何気なくやっているプロセスを見直すよいチャンスと捉えていらっしゃいました」。ものづくりの先進国である日本だが、そのための新たなテクノロジーの導入が必ずしも進んでいるとはいえない。先行するシステムがなかった中国などでは、初めから最先端のテクノロジーを導入することも珍しくない。今回の震災は大変な出来事ではあるが、一方で日本のものづくりの仕組みがジャンプするタイミングと捉えることもできる。
共に成長するCTCとシーメンスPLMソフトウェア グローバルへの展開
新興市場を中心に進むグローバル化と共に一層激化するビジネス環境の中、CTC、シーメンスPLMソフトウェア共に順調にビジネスを伸ばしている。鳥越は「従来から強いインフラ系のビジネスから、設計領域の事業が成長しており、組織強化をしてきたことが徐々に成果を上げ始めてきています」と語る。シーメンスPLMソフトウェアもグローバルに順調な業績拡大を続けている。日本の業績も好調で、特に昨年度は、中国のビジネスよりも成長率が高かった。これは、日本の製造業のグローバル化に伴うIT投資の必要性はまだまだ進められる余地があることを意味する。3Dデータも作る段階から活用へと進んできている。島田氏は言う。「昨年ついにPLM製品であるTeamcenterの売上が、CAD製品を上回りました」。ソフト+インフラ+業務をトータルで支援するCTCのサービスとシーメンスPLMソフトウェアの製品が、ここに結びつく。
いよいよ市場から強く求められる全体ソリューションの提案
高度化、多様化するユーザーニーズに対して、CTCは顧客に密着した使いやすいシステムをトータルに展開することで、それに応えることを目指す。「強みであるインフラの実績を活用して、様々な製品を単にパッケージで販売するのではなく、システムで販売する体制を強化しています。設計の領域から、更にはCRM、アフターマーケットまでを意識したソリューションをトータルで提案します。ぜひ、このようなフレームワークの中で、シーメンスPLMソフトウェアの様々なモジュールを活用していきたい」という抱負を、鳥越は語る。これに対して、「シーメンスPLMソフトウェアにおいては、以前は3DCADのデータ管理として利用されることが多かったTeamcenterが、いま日本においても本当のインフラになりつつあり、ソリューション提案が一層強く求められてきています。だからこそ、CTCのサービスは欠かせないものです」と、島田氏も応える。
顧客の要求の多様化グローバル化に歩調を合わせる体制の強化
複雑化している現在のものづくりでは、機械設計だけではなく、電気設計、そしてソフトウェア設計が全てスムーズに連携されなければ開発はうまくいかない。そのような開発環境の構築のために、CTCではEIMANAGERを展開し、既に成果をあげている。更に、現在では情報セキュリティの観点から、シンクライアントなどへの対応も求められてきているが、それには強固なネットワークインフラが必要である。「既に、メカ設計分野を中心に、強力なトータルソリューションを展開しているシーメンスPLMソフトウェアのTeamcenterですが、それを動かすためのインフラの提供、あるいはTeamcenterと連携する様々なシステムを展開できるというところにCTCの強みがありますし、近年は、お客様の海外進出が進んでいますが、CTCもそれに対応すべく、グローバル化に向けた体制の強化を進めています」と、鳥越は語る。
設計環境サービスが提示する新たな製品の開発環境
しかし、それだけではまだ充分でないとみるCTCは更なるサービスの展開を目指している。それが設計環境サービスと呼ばれるソリューションの展開である。「多様化する顧客ニーズの中で、場所を問わずにどこでも必要なソフトウェアやサービスが使える、セキュアでありながら必要データがどこでも使える、必要な時に必要なだけ使えるということが求められてきています。それをトータルで支援するのが、設計環境サービスです。設計分野で中核となるのはNXやTeamcenterですが、そこで生み出されたデータを安全に保管し、設計や製造の分野を越えて、顧客との関係、あるいはアフターマーケットまで意識した展開をしていきます。
まず、5月よりクラウド技術を活用したサポートサービスを開始し、順次設計環境サービスを拡充していく予定です」と、鳥越は語る。このような設計環境サービスに対して、シーメンスPLMソフトウェアもレンタル形式のライセンス提供で応えていく。従来とは異なり必要な時に使うことができるため、顧客のニーズに柔軟に対応するサービスとしての展開にも対応できる。
新たな事業領域に向けて手を携えるCTCとシーメンスPLMソフトウェア
設計環境サービスの構想の中では、設計者などの従来からの関係者だけではなく、CTCが重要視している、CRMやアフターマーケットの関係者も関わってくる。最近登場したシーメンスPLMソフトウェアのTeamcenter Mobilityも新たなツールの1つだ。iPadの上で動き、Teamcenter上の3Dデータ等様々な情報を誰でも活用できる。 「業種によっては、大いにIT化を進める余地のある業界があります。CTCは、このような新しいツールの効果的な展開も含めて、シーメンスPLMソフトウェアさんと共にソリューション提案を積極的に進めたい」と鳥越は熱く語る。いよいよ本格的になってきたCTCとシーメンスPLMソフトウェアのコラボレーションによって、ユーザーの設計環境のこれからの進化が楽しみである。
2011.5