コラム

「ものづくりIT」を支援するCTCとシーメンスPLMソフトウェアの取り組み~新たな時代の設計サービスの構想~(第2回)

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震災後のビジネスは?昨今のITトレンド、新たなサービスの具体像とは?
シーメンスPLMソフトウェア日本法人社長の島田太郎氏との対談、第二回目です。

「震災以降も継続的に投資意欲の高い日本の製造業」

本対談の第1回目が行われた時は、3月11日の大震災から1ヶ月が過ぎた頃であった。その際にシーメンスPLMソフトウェア日本法人社長の島田太郎氏は、「こんな時だからこそ、復興ではなく、全く新しいものを作るべきではないでしょうか」と述べていた。
今回の対談の冒頭、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)エンタープライズビジネス第3本部本部長の鳥越浩嗣は、「正直、震災後はビジネスがスローダウンしてしまうのではないかと、懸念していました。しかし、実際には逆でした。日本の製造業は積極的に投資を続け、CTCとしてもむしろ売上は伸びているのです」と述べている。前回の対談で鳥越と島田氏の間で共有された考え方は、国内の製造業でも実は実行されていたようだ。

「メガトレンドを意識した展開を全面的に支援」

シーメンスPLMソフトウェア日本法人 代表取締役社長 島田太郎氏

シーメンスPLMソフトウェア日本法人
代表取締役社長 島田太郎氏

島田氏は、「シーメンスでは、常にメガトレンドを意識してビジネスをやることが重要ということがいわれています」と述べている。大震災や円高といった出来事が、製造業の海外進出を確かに加速しているということを否定することはできないだろう。だが、生産拠点の海外進出をはじめとする、ビジネス拠点の海外への移動は、継続的に進行している都市化やグローバル化といった大きな潮流が根底にあってのものだ。ともすればそのような大きな出来事には目を奪われがちになるが、製造業の海外進出もあくまでもそのようなメガトレンドがベースにあってのことだ、ということを忘れてはならない。
鳥越は別の観点からそれを説明している。「この3、4ヶ月というもの、ものすごい勢いでデータの保護も含めた、BCP関連のビジネスが伸びています。しかし、これは大震災が起きたから、急激に伸びているとは必ずしもいえません。実は、DR関連のITは継続的に長足の進歩を遂げてきており、大震災はその背中を押しはしたとは思いますが、お客様のほうもトレンドを見ながら投資をされているのではないかと思います」
円高がきっかけになってアジアに進出した企業も増えている。しかし、そのベースにはITの進化で、データのバックアップも国内にある必要がない、シンガポールにあってもいいじゃないか、という状況が許されるようになっている。このような時、グローバルで活躍するシーメンスと、国内に強い軸足を持つCTCは大きな強みを持つといえる。

「CTCとシーメンスPLMソフトウェアが目指す新たなサービスの具体像とは」

シーメンスPLMソフトウェア対談

シーメンスPLMソフトウェア対談

昨今の業務システムのITのトレンドは、徐々にクラウドによるシステムの活用という方向に移ってきている。このことによって、ユーザーはどこにいても必要な情報を必要な時に扱うことが可能になっている。設計業務においてこれを実現するのが、CTCの設計環境サービスである。データセンターを活用した、クラウドの設計環境を提供することで、設計業務においても「いつでも、どこでも」の実現が可能になる。
ここでポイントとなるのが、3D CAD等のアプリケーションだ。現在はクラウド等で実現している例は、ほんどない。島田氏は、「シーメンスPLMソフトウェアは、変革者としてそこに取り組む準備がある」と言う。
逆に、鳥越は、「既にお客様が設計環境サービスを実現するためのインフラ技術は整っています。私達が待っているのがアプリケーションベンダーの対応なのです」と語る。
それに対して、島田氏は「Solid Edgeを皮切りに、リモートホスティングなどの技術で、設計環境サービスの中で使用可能かを検討しています」と応える。「Solid Edgeでは、シンクロナス・テクノロジーが高い評価を得ています。加えて、設計環境サービスの中で使えることは、画期的なブレークスルーです。どこでも使用できる環境は、既に3D CADを使用しているユーザーにとっても、新たに導入するユーザーにとっても大きく入り口を広げていくことになると思います」と続ける。

「設計環境サービスと新しいデバイスの融合でマーケットが広がる」

使用するデバイスも変化してきている。代表的なものがタブレット型のデバイスだ。iPadをはじめとして様々なタブレット型デバイスが急速に、法人ユースでも広がっている。そのような状況を受けて、シーメンスPLMソフトウェアでは既にTeamcenterのユーザーを対象として、Teamcenter Mobilityを提供している。島田氏によれば「Teamcenter Mobilityの新しいバージョンでは見るだけではなくマークアップも可能になっています」と着々と進むその進化を説明する。
このことで関わる顧客層も変化している。鳥越は、「かつて、お客様にシステムを導入する際に、パソコンもセットで販売していた時には特定業務システムの販売方法でした。しかし、タブレットが関わるようになってから、今まで私達が関わってこなかったお客様とも関わることが可能になってきました。例えばアフターマーケットなどがそうです。設計環境サービスとタブレットなどの新しい端末が融合していくことで、現場に図面などの情報がシームレスに飛んでいくことが、夢物語から現実になってきているのです。設計環境サービスを本格的に展開していくことで、さらに新しいマーケットができるのではないかと期待しています。実際、クラウドの流れが進む中で、次々に新しいサービスや市場が誕生しています。そこが大変に面白く、潜在性があると思います」と語る。

「ビジネスモデルの変革も視野に入れたカスタマー支援」

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 エンタープライズビジネス第3本部長 鳥越浩嗣

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
エンタープライズビジネス第3本部長 鳥越浩嗣

島田氏は、シーメンスPLMソフトウェアにとっても、この動きはビジネスモデルの変化につながってくるだろうと語る。同社が検討するリモートホスティングのような技術と、CTCの設計環境サービスが融合していくことで、鳥越も従来とは販売から導入サービスのやり方も変わってくるだろうと考えている。ITは常に革新的な変貌を遂げつつあり、それを導入する企業の業務のやり方、導入方法が変わってくるのは当然のことだ。
顧客の変化にあわせて、導入を支援するCTC、シーメンスPLMは、共にそれらの変化にあわせて、支援のやり方、ビジネスモデルを常に変えながらアプローチする準備ができている。設計環境サービスの展開がいよいよ本格的になる今、半年後、一年後がどのように変わっているのか、期待値は高い。

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