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初心者でもわかる5G

第4回 5Gの技術がもたらす新しい通信社会(その2)

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初心者でもわかる5G

今回は「ネットワークスライシング」「マッシブMIMO」が私たちの通信利用にどのような影響を及ぼしているかを2回にわたってご紹介します。

前回は、「5Gの技術がもたらす新しい通信社会」と題しまして、5Gで新たに使われる技術のうち、特に頻繁に登場する「ネットワークスライシング」をご紹介しました。今回は、「マッシブMIMO」が私たちの通信利用にどのような影響を及ぼしているかをご紹介します。 ネットワークスライシングの技術的な詳細は、コラム「第4回 3GPP SA5における標準化 - ネットワーク・スライスの管理 -」にも記載されていますので、あわせてご覧ください。

5Gの技術②「マッシブMIMO」

マッシブMIMO(Massive MIMO)とは、基地局側のアンテナ素子数を増やすことで、より電波を効率的に使えるようにする技術です。
初期のモバイルネットワーク用のアンテナは、アンテナ素子が1つでした。この為、電波として送ることが出来る信号は1回線のみでした。
この構成の場合、複数の端末が同じ信号を使って通信を行うので、端末が増えると混雑して接続しづらくなります。
また、1つのアンテナから一元的に広範囲に向けた電波を送信する為、電波が届くギリギリの場所(セルエッジ)では、基地局からの電波は端末に届くけれど、端末からの電波が届かないという現象が起こります。
このような時、端末は基地局に向かって電波を届ける為、自分の電波強度を上げていきます。この電波強度を上げた端末は、周りにいる他の端末の通信を妨害してしまうのです。

従来のモバイルネットワークで発生した問題(当社作成)

従来のモバイルネットワークで発生した問題(当社作成)

スマートフォンが普及したばかりの頃、通信回線は3Gでした。当時、混雑している駅で全く通信が出来ない、という状況に遭遇した方も多いと思います。この事象が発生した要因は幾つかあるのですが、そのうちの一つはこういった電波的な事情でした。

マッシブMIMOアンテナは、外見は1つの平面アンテナに見えますが、内部は64個や128個といった大量のアンテナ素子で作られています。さらに、ビームフォーミングという技術を使って、この大量のアンテナ素子から発する信号を合成し、様々な方向にビーム状の細い信号を送り、これらを細かく端末に割り当てていきます。割り当てるビームは各端末だけでなく時間も細かく制御する為、端末からは専用線が配備されているように見えます。

マッシブMIMOアンテナの仕組み(当社作成)

マッシブMIMOアンテナの仕組み(当社作成)

この技術により、各端末が他の端末による電波の妨害を受けることや、通信路の混雑により速度遅延が発生するといった問題が軽減されます。繋がれば快適な通信速度が出るけどそもそも繋がらない、といった状況を回避する為、5Gでは繋がりやすい環境も整備されています。

今回は

  • 物理的に通信路を分ける「マッシブMIMO」

についてご紹介しました。
次回も5G通信に使われている技術をご紹介したいと思います。

著者

中島 暁子

中島 暁子

2002年入社。衛星通信運用業務を経て、2008年より地域WiMAX、Wi-Fiなど無線関連のサービス企画、プリセールス、導入作業に携わる。 現在はCTCグループの5G/ローカル5GにおいてRAN領域全般を担当。

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