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ローカル5Gコラム

第2回 ローカル5G活用のために必要な準備事項や留意点とは?

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第2回 ローカル5G活用のために必要な準備事項や留意点とは?

ローカル5Gを活用するために必要な準備事項や、留意点など技術的な要素を含めて解説します。

1.免許手続きとは

前回のコラムでも少し触れましたが、『5G』『ローカル5G』『自営BWA』の利用にあたっては免許手続きが必要です。一方、『Wi-Fi6』の利用に免許は不要です。

免許手続きとは何のために、何をするのか?

電波は電力などと同じく公共性が高い、かつ帯域幅など利用できる範囲に限りがあるという理由から、先進国では基本的に法令が定められています。日本においては電波法があり、無線電波を発する際は、これに則って総務省に免許手続きを行う必要があります。

ローカル5Gにおいても電波を発する基地局を設置する際は、免許手続きが必要です。

免許手続き上のPoint

免許手続き上のPint図版

ローカル5G等、それぞれの通信システム毎に規格と審査の基準が設けられており、基準を満たす内容の申請だけが免許を取得できます。免許制により電波の交通整理がなされ、隣接事業者や他通信システムの事業者との混信を回避できます。これは無線ネットワークの安定稼働や品質を保つといった意味で重要となる要素です。

一方、免許が不要な通信システム(Wi-Fi6等)は、申請手続きが不要です。導入の手間はかかりませんが、利用している回線が保護されない為、安定稼働という点では不安が残ります。

実は簡単ではない免許手続きと留意点

『免許手続き』と聞くと、決められたフォーマットに必要な項目を記入し、提出して終わり、というイメージがあると思います。 ですが、無線の免許申請はただ提出して終わり、ではありません。各地の総合通信局、免許の種類によっては総務省に直接訪問し、申請書類の内容を説明する必要があります。

最初に記載した通り、無線免許には規格や審査基準が設けられています。これらを満たした申請内容となっているか、書面だけで判断がつかない場合は、総合通信局や総務省の担当者から質問を受けます。受けた問合せに適切な回答が出来ないと、免許取得の条件を満たしているか判断がつかない為、追加の情報を求められ、場合によっては免許取得を許可してもらえない可能性もあります。

ただ書類を作成するだけ、ではなく、適切な無線利用の為に正しく申請されているかどうかを審査されるのです。無線の利用に慣れていない場合、この部分はハードルが高いと言えます。

新規導入時の免許手続きを簡単にまとめると以下のような流れになります。

免許申請から交付までの流れ

実際の免許手続きでは、技術的な知見が必要な要素も多く、ノウハウが求められます。
今回は、技術的な知見が必要となる要素を2つほど紹介いたします。

2.免許手続きにおける技術的な要素と留意点

無線エリア設計

ローカル5Gや自営BWAの無線ネットワークは、『基地局(親)』と『陸上移動局(子/端末類)』で構成されます。基地局をある場所に固定設置して、その基地局からの電波が届く範囲で陸上移動局(端末)は通信出来る、という設計です。

スマートフォン等を想像してもらえると分かり易いですね。携帯事業者の基地局の電波が届く(入る)エリアであれば電話やインターネットが使えますが、圏外になると通信は一切出来ないはずです。

私たちはスマートフォンやタブレットを、携帯事業者からのサービスとして利用しているので、基地局の電波は携帯事業者が管理しています。

しかし、『ローカル5G』では自らが基地局を設置して無線ネットワークを構築するので、

  • どこに基地局を設置するか?
  • どういう基地局の設定にするか?

を各企業、団体の方が自分達で考える必要があります。これを『エリア設計』と呼びます。

対象エリアをカバーする為の最適な配置検討が必要

無線ネットワークを構築したい場所(エリア)は決まっているはずです。自分の敷地内の全部なのか一部なのか分かれると思いますが、使いたいエリアできちんと無線ネットワークが使えるように、基地局の配置(台数)や向き、電波の強さ(送信電力)を予め検討しておかなければなりません。

また、これらの情報は基地局の「諸元」という項目で、免許申請書に記載する必要があります。

エリア設計を適切に行わないと、自分達が無線ネットワークを使いたいエリアが圏外になってしまい、免許を取得できたけど、使いたい場所に電波が届いておらず使えない・・・という悲しい結末になるかもしれません。

エリア設計は、電波伝搬の知見や専用のシミュレーションソフトを用いて、しっかりと検討することが大切です。

事業者間調整

この事業者間調整は免許申請中や、予備免許交付のタイミングで必要になる可能性があります。また、本免許が交付されて使用開始したあとに他者の都合で発生する場合もあります。

具体的には『自分と他者の無線ネットワークが干渉しないようにする』必要があります。

近隣事業者との干渉調整

自分達が使いたい場所に電波が届くように設計する、と先ほど書きましたが、電波は固定範囲(場所)でとどめることは難しく、範囲の外側にも届いています。圏外となる程度の微弱の電波ですが、そこに他者の無線ネットワークがあれば、そちらに電波干渉(混信)という形で悪影響を及ぼしてしまう可能性があるのです。

これは、他者の無線ネットワークが自分たちの無線ネットワークに電波干渉を与える可能性もあるということになります。距離が近い事業者と、電波の見通しが良いほど電波干渉の可能性が高まります。

そのため、事業者が相互で電波干渉を起こさないような措置をとる(または電波干渉とならない根拠を説明する)ことが必要になります。

先ほどの電波申請から交付までの流れに当てはめると、
自分→他者への電波干渉は①と②と④のタイミング、
他者→自分への電波干渉は④のタイミングで調整することになります。

干渉を与えるかどうか、与えてしまう場合はどう改善すればいいのか、他者へどういった改善命令をすれば自分の無線ネットワークが守られるのか、といった内容を検討し調整する為、『電波伝搬の知見』が必要となります。

今回は免許手続きの中で必要となる対応として2点をご説明しましたが、これ以外にも専門的であり対応不可欠な項目がいくつもあります。免許手続きは『単なる書類の手続きだけではなく、技術的な知見をもとに適切な検討と対応が必須!』であることを知っていただければ幸いです。

3.無線従事者による運用

最後になりますが、免許手続きが必要な無線システムにはもう1点、重要なポイントがあります。
それは「無線従事者(有資格者)が設備の運用を行う」ということです。

無線システムを構築する際に免許申請を行い、免許が取得出来たら終了でいいのでは?という考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、免許を受けた無線局が他の局から混信を受けないよう守られるということは、逆にいうと自分達の無線局が他の局に混信を与えてはいけない、ということです。その為、無線システムは電波の技術や法令に関する一定の知識を持った有資格者が適切に運用することが求められます。
ローカル5G、自営BWAの運用には、「第三級陸上特殊無線技士」の資格を保有した無線従事者が必要となります(システムによってはさらに上位資格が必要となる場合があります)。無線システムを使っている間はこの無線従事者が常時電波の状態を監視し、有事の際には直ちに電波の送信を止めることが求められます。利用する時だけ電波を送信する、といったシステムであればその時だけ無線従事者がいればいいですが、常に電波を送信しているシステムの場合は、24時間365日、無線従事者が運用していなければなりません。

このように、『ローカル5G』『自営BWA』の利用にあたっては一般の企業や団体にはハードルの高い対応が発生します。もう使うのあきらめる!と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし心配はいりません。ノウハウのある企業が支援することで、電波の知見がなくてもローカル5Gや自営BWAを使うことが出来ます。ぜひ、お気軽にご相談ください。

著者

中島 暁子

中島 暁子

2002年入社。衛星通信運用業務を経て、2008年より地域WiMAX、Wi-Fiなど無線関連のサービス企画、プリセールス、導入作業に携わる。 現在はCTCグループの5G/ローカル5GにおいてRAN領域全般を担当。

  • 本コラムは2021年12月現在における技術情報の加筆・修正を加えた再編集版となります。
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