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ローカル5Gコラム

第4回 最新の法令検討状況と、今だから見えてきた導入検討時の課題・解決ポイント

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第4回 最新の法令検討状況と、今だから見えてきた導入検討時の課題・解決ポイント

2019年12月のNSA方式の制定から2020年12月の改正に至るまでの動きをご紹介します。

2020年12月のローカル5G SA法令制定にあたり、総務省の新世代モバイル通信システム委員会・ローカル5G作業部会においても様々な議論が行われました。
そこで今回は、2019年12月のNSA方式の制定から2020年12月の改正に至るまでの動きを、少しご紹介したいと思います。

1. 周波数拡張と他システムとの共用

2020年12月の法令制定の際、ローカル5Gで利用できる周波数が拡張され、28GHz帯(ミリ波)だけでなく、4.7GHz帯(Sub-6)が利用可能となりました。
特に期待が大きいのは、より干渉に強いSub-6帯の周波数利用です。しかし、Sub-6帯は使い勝手が良いことから、既にローカル5G以外の様々なシステムで利用されている周波数帯でもあります。

様々な観点から検討が行われた結果、当初予定されていた4.6-4.8GHzでは屋外での利用が出来ないこととなり、代わりに屋外で利用可能な周波数として4.8GHz-4.9GHz帯が整備されました。
また、ミリ波についても、利用可能な周波数が拡張され、28.2-29.1GHzと900MHzもの広い帯域を使えるようになったことから、高速大容量通信の期待が大きい周波数となっています。
しかしこちらも、衛星通信で既に使われており、お互いに干渉しないよう、幾つかの制約が入っています。

周波数ごとのローカル5Gの制約は以下の通りです。

周波数帯ごとのローカル5Gの制約一覧

周波数ごとに、屋外や地域などの条件によって使えたり使えなかったり、使う場合に対策が必要だったり…と、かなり複雑な取り決めとなっています。

2. カバーエリアに関する法令の再検討

カバーエリアに関しては、他者土地利用という、非常に分かりづらい利用制限がありますが、こちらの制限内容については見直しが行われました。
例えば、自分の土地に設置したローカル5G無線基地局からの電波が他者土地に漏れているけれど、自分の土地の中でしか端末が移動しないというシチュエーションの場合、現行の解釈では「移動端末の利用は難しい」となりますが、こちらが状況に応じて柔軟に解釈されるように変更されました。

他者土地利用に関する利用制限イメージ

他者土地利用に関する利用制限イメージ

また、自営BWAについては地域BWAと同じ計算式でカバーエリアを計算するよう審査基準で定められている為、実際のカバーエリアよりもかなり広いエリアで免許申請を進めなければならない状況でしたが、こちらも再検討が行われ、実際の自営BWA特性に則した条件での算出が可能となりました。

3.事業者調整で効果を発揮するエリアシミュレーション

ただし、これらは明確に定義されておらず、実際の対応の際に都度確認が必要となります。特に、カバーエリアについては隣接の事業者との調整が必要となり、相手方に迷惑の掛からない範囲での利用である旨を明示する必要があります。
弊社でも事業者との調整は実施しておりますが、計算結果で示すと事業者様から「こんなにこちら側に影響するのか」と難色を示されるケースもあります。その為、エリアシミュレーションなどの実態により近いカバーエリア予測値を添付し、計算結果とシミュレーション予測を両方ご提示して、了承を得たケースもあります。

エリアシミュレーションイメージ

4.TDD同期の検討はさらに複雑になる

TDDについて、当初は「同期」と「非同期」の二択でした。しかし当時、私達が実際に幾つかの調整を行った結果、ほぼすべての場合において「同期が必須」との回答を得ました。
もちろん干渉を回避するにはこの方式がベストです。しかし、TDDは同じ周波数で上り通信と下り通信を共用する為、完全同期の場合は上り通信、下り通信のタイミングも調整対象事業者と合わせる必要があります。そうすると、上り通信と下り通信の比率も調整対象事業者と合わせることになり、「端末から基地局へのデータが多いから上り通信を増やしたい」というような、上り下りの比率を変えることが困難です。
そこでこの問題を回避する為、「準同期」という定義が追加されました。準同期はTDD同期調整において一部のスロットだけ非同期で運用可能となる為、必要最低限の同期は取りつつ、上り下りの比率を変えることが可能です。

そもそもTDD同期調整、及びTDDの比率の決定は、電波工学を知らない人が検討するには非常にハードルが高い内容です。さらにここにきて、比率の選択肢が広がるという、一般事業者には頭の痛い状況となってしまいました。

TDD準同期イメージ

ローカル5Gの検討には継続的な知識アップデートも必要

このように、ローカル5Gは新しい無線の利用形態であるため、制度化されて終わりではなく、利用を継続しつつ新しい解釈がどんどん取り込まれていきます。その内容は非常に専門性が高く、常に最新情報を追いかけ、内容を理解していくことが大事ですが、それがなかなか難しいのも事実です。

5.お客様のお悩みをCTCグループが解決

これまで様々な場面で、ローカル5Gの免許申請やエリア設計に関するサービスをご紹介してまいりました。
しかし最近では、

  • ローカル5Gを使おうと思うが決定的な理由がない
  • ローカル5Gが良いのか、Wi-Fiが良いのか分からない
  • 自分達で進めてみたけど分からなくて行き詰ってしまった

というご相談が多く寄せられています。

そこで、実際に導入が決まったお客様への支援だけでなく、検討中のお客様に対し必要な技術情報のご提供、エリアシミュレーションといった導入前のご支援も行わせていただくこととしました。技術的な不明点や懸念点を払拭した上でローカル5Gをご利用いただくために、これまでの知識やノウハウで皆様の検討をご支援します。

著者

中島 暁子

中島 暁子

2002年入社。衛星通信運用業務を経て、2008年より地域WiMAX、Wi-Fiなど無線関連のサービス企画、プリセールス、導入作業に携わる。 現在はCTCグループの5G/ローカル5GにおいてRAN領域全般を担当。

  • 本コラムは2021年12月現在における技術情報の加筆・修正を加えた再編集版となります。
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