課題と効果
- 課題
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- プライベートクラウド上のDRサイトに、メインサイト運用コストの約6割の維持コストが発生
- DRサイトの切り替え作業に知見が求められ、人によっては作業できないリスクも
- DRサイトの切り替えが手作業中心で、人的ミスを誘発する恐れも
- 効果
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- DRサイトの運用・維持コストを従来比60%削減
- DRサイトの切り替え作業を自動化し、属人性を排除
- 「リハーサル機能」を使い、無停止でDRサイトの切り替え訓練を可能に
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 京セラドキュメントソリューションズ株式会社
- 所在地
- 〒540-8585 大阪市中央区玉造1丁目2番28号
- 設立
- 1934年11月
- URL
- https://www.kyoceradocumentsolutions.co.jp/
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京セラドキュメントソリューションズ
技術本部 ソフトウェア開発統括部 ソフトウェア技術推進部
ソフト技術推進2 課 課責任者葉山 真義氏
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京セラドキュメントソリューションズ
技術本部 ソフトウェア開発統括部 ソフトウェア技術推進部
ソフト技術推進2課南 洋介氏
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京セラドキュメントソリューションズ
技術本部 ソフトウェア開発統括部 ソフトウェア技術推進部
ソフト技術推進2課北野 恵介氏
導入背景
ハイブリッドクラウドを活用して「ビジネスを止めない仕組み」を作る
京セラグループの中核企業として、複合機「TASKalfa」シリーズ、プリンター「ECOSYS」シリーズなどを提供し、グローバルで大きなシェアを誇る複合機・プリンターメーカー、京セラドキュメントソリューションズ。同社は2014年から段階的にクラウド上にソフトウェア開発環境を移行し、2017年にはハイブリッドクラウド上にDRサイトを構築することで、コストを抑えながらビジネスロスを最小化する環境を整備した。
同社の強みは“幅広い製品ラインアップときめ細かなカスタマイズ”。そのため、ファームウェアや制御システム、管理アプリケーションなどのソフトウェア開発は同社の競争力を支える柱となっている。そんな同社が取り組んだのが、ビジネスに直結するソフトウェア開発基盤をクラウド化し、「ビジネスを止めない仕組み」を作ることだった。技術本部 ソフトウェア開発統括部の葉山真義氏は次のように話す。
「DRサイトはシステム担当者なら誰であれ、どんな状況であれ、本番と同等のパフォーマンスを持ったシステムを素早く稼働させ、事業を継続できなければなりません。もちろんコスト効率も追求することは大前提です。そのためには、“それなりの仕組み”が必要だと考えたのが、今回のDRサイト構築の背景です」(葉山氏)
伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)と協力して2014年にプライベートクラウドを構築。東京・大阪の開発基盤をプライベートクラウド環境に移行した上で、他拠点にある同じCTCのプライベートクラウドサービス「ElasticCUVIC」と「TechnoCUVIC VP」上にDRサイトを構築して、事業継続性を担保した。
だが、2014年からプライベートクラウド上でのDRサイトの運用を開始したものの、新たな課題が生じていた。1つは運用コストだ。平常時には利用せずとも、機器や設置スペースなどによる維持コストが発生していた。
インフラ基盤の構築・運用を担当している南洋介氏は、「メインサイト運用コストの約6割のコストが発生していました。新しいアプローチをCTCとともに継続して探していました」と振り返る。
2つ目の課題は属人性の排除だ。インフラ基盤の構築・運用を担当している北野恵介氏は、「南と私がノウハウを共有して、インフラ運用や事業運営に影響が出ない仕組みにしています。ただ、DRにはある程度の知識が必要で、誰でも簡単に操作できるわけではありませんでした」と話す。
そして3つ目は、切り替えを手作業で行う必要があったことだ。南氏は「(作業を確実化するためにも)復旧手順をワークフローとして自動化し、人が作業しなくても、システムが自動的に環境を立ち上げ必要な設定を済ませてほしいと考えていました」と話す。
システム概要
「CUVIC on AWS」と「VRP」を利用した新たなDRサイトを構築
こうした課題解消に向けて、同社は2017年11月、CTCとともに新たな事業継続ソリューションの選定を開始した。要件は「コスト削減」「業務への影響を最小化」「運用を自動化」「誰でも扱えること」などだ。さらに「マルチクラウド環境で利用できること」も重視した。同社は中長期的に開発効率化を狙うため、選定と並行してマルチクラウド化の推進にも着手していたためだ。
具体的には、CTCのパブリッククラウドサービス『CUVIC on AWS』を通じて、AWSの利用を開始していた。CUVIC on AWSは、AWSの技術ノウハウを持ったCTCがシステムの設計・構築・移行、導入後の運用を担うことで、ユーザーが「AWSを使ってやりたいこと」に集中できるサービスとなっている。
以上のような、プライベートクラウドとパブリッククラウドによるハイブリッド環境となる中で、事業継続ソリューションの最有力候補としてCTCが提案したのが、ベリタステクノロジーズの事業継続ソリューション「VRP」だった。
VRPの特長は、レジリエンス管理のプロセスをワークフローとして自動化できること。これにより、プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド環境、それぞれの状態変化を常時監視し、Webベースのダッシュボードで可視化。各環境間でのワークロードの移動もワンクリックで自動実行することで、すみやかな回復処理を支援する。
同社はCTCのエンジニア、ベリタステクノロジーズの導入コンサルタントとチームを編成し、2018年2月から構築作業をスタート。3月中旬に動作テストを開始し、ほぼトラブルなく4月の本番稼働にこぎつけた。
導入効果
運用コストを約60%削減。運用の属人性も排除
導入効果は大きく3つ。1つはコスト削減だ。プライベートクラウドからCUVIC on AWS上にDRサイトを移行したことにより、停止中のコストを従来方式と比較して約60%削減。メインサイトの4分の1のコストで運用できるという。初期構築コストも数カ月で回収できる見込みだ。
残る2つの効果は属人化の排除と訓練の内製化だ。DR切り替えに伴うシステムの立ち上げや設定は不要になり、VRP上で数クリックするだけでDRが可能になった。また、リハーサル機能を活用して、自分たちだけで訓練できるようになった。これにより、うっかりミスを防止したり、新たに配属されたスタッフに対して切り替え作業を手間なく教えたりすることも可能になった。
VRP導入後のシステム構成と費用効果
今後の展望
「ベリタス国内唯一の認定パートナー」としての知見と手厚いサポートに今後も期待
プロジェクトを振り返り、南氏は次のように話す。「今回の要件は、コスト削減と属人性を排除することでした。しかし自動化の仕組みは、その後も状況変化に応じたカスタマイズやメンテナンスが不可欠です。CTCはその点も踏まえてメンテナンスの手間が少なく、サポートも手厚い製品を紹介してくれました。パブリッククラウドとVRPを組み合わせることで、『AWSを使って開発を効率化する、コスト削減しながらDR運用を確実化する、マルチクラウド化も想定する』という要件を満たす提案をいただいたことも、さすがだと思いました」(南氏)
北野氏も、「VRPのリハーサル機能を利用することで、CTCの協力の下で行っていた訓練を自分たちで実行できるようになりました。導入後の教育面でも手厚いサポートを受けることができました」と評価する。
導入から保守運用まで一括対応できる点はCTCの強みの1つだ。自営インプリ、24時間365日の自営保守を行う体制を構築し、質の高いサービスを提供する。ハイブリッドクラウド環境でVRPの魅力を引き出せたのも、国内唯一のベリタステクノロジーズ認定プラチナパートナーとしての技術力、ノウハウがあった故といえるだろう。葉山氏は、今後の展望を次のように話す。
「今後はマルチクラウドの活用をはじめ、現場でのRPA活用や、業務におけるAI活用も実現していくつもりです。こうした取り組みは、各種製品/サービスの幅広い知見・ノウハウを有するパートナーとの連携が大きなポイントになると思います。今後も、いかに業務を継続・発展させていくかという“攻めの観点”から、ソリューションを提案いただけることを期待しています」(葉山氏)
導入製品・ソリューション
CUVIC on AWS、Veritas Resiliency Platform