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ローカル5Gコラム

第8回 ローカル5Gの「SIMカード」

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第8回 ローカル5Gの「SIMカード」

今回は、SIMカードのローカル5Gネットワークでの役割と手続きについてご紹介します。

ローカル5Gにおいて、Wi-Fiなど一般的なネットワークと異なり、独自の考慮が必要なのが「SIMカード」の存在です。
SIMカードは普段皆さんが利用しているスマートフォンにも使われており、こちらは通信事業者が提供しています。ローカル5Gの通信にも同様にSIMカードは必須の存在ですが、キャリアネットワークと同じく最初から搭載されていると思われる為か、意外と忘れられがちであり、事前に準備をしておかないと導入の段階で手続きや調達に翻弄されるケースもあります。
今回は、SIMカードのローカル5Gネットワークでの役割と手続きについてご紹介します。

1.今さら聞けない「SIMカード」とは?

私達が使っているスマートフォンには、「SIMカード」と呼ばれるICチップが埋められた小さなカードが入っています(物理的なカードではない「eSIM」と呼ばれるタイプのSIMもあります)。SIMカードにはいくつかの大きさがありますが、最近では「Nano SIM」というカードが主流で、サイズは12.3mm×8.8mmです。不注意で失くしてしまいそうなくらい小さなカードですが、このカードが無いと通信ネットワークを使うことが出来ません。なぜならばこのカードこそが、通信ネットワークを利用する為の認証に使われているからです。
SIMカードには「IMSI」という番号が登録されており、この番号がネットワークに接続する為の認証に使われます。

SIMカードのイメージ

SIMカードのイメージ

2.「IMSI」とは

IMSI(International Mobile Subscriber Identity)の定義は、「移動通信システムの端末/加入者の識別あるいは、位置情報等を管理するための15桁の番号」です。
前の項でご紹介した通り、この番号はSIMカードに記録され、端末がSIMカードを読み込んで無線通信を介して識別されます。
通信事業者のネットワークだけでなく、ローカル5Gでもこの方式を採用しており、番号によってどのネットワークに接続できるかが決まります。
IMSIの15桁をさらに細分化すると、MCC、MNC、MSINの3種類の番号から構成されています。このうちMCCとMNCをまとめた5桁または6桁の番号を「PLMN(Public Land Mobile Network)」といいます。

IMSIの構成

IMSIの構成

IMSIは、国際電気通信連合(ITU-T)がE.212勧告として標準化しており、世界共通のルールです。日本の場合、MSINは総務省が管理しています。

3.意外と複雑!ローカル5Gの「IMSI」

ローカル5Gの場合は用途によって「IMSIの取得方法」と「SIMカードを誰が手配するか」が変わります。
この為、どのような通信を行い、誰がIMSIを取得するか、誰がSIMカードを手配するかをあらかじめ整理しておく必要があります。
ここからは複雑なので、幾つかの段階に分けて説明します。

1)自営利用(オンプレミスコア)の場合

まず、ローカル5Gの設備を自社で全て準備し、クラウドサービスを使わず、ユーザも全て自社内というケースについてご説明します。
この場合、SIMカードは「利用者が調達」します。基地局設備を導入する際、SIMカードも併せて調達を依頼するケースが一般的です。
続いてIMSIの取得方法です。ローカル5Gには「実験試験局」と「商用局」という2つの免許取得の方法があります。(2つの免許の違いは、当コラム第3回「ローカル5G利用準備の際によくあるご質問 」をご参照ください)
多くのローカル5Gの利用者が「商用局」で免許を取得されています。商用局、自社内での利用、クラウドサービス利用なしでローカル5Gを利用する場合、「自営用PLMN」という特定の番号が指定されています。番号は999-002です。
この利用方法の場合は、「自営用PLMN」を使うことを前提に、総務省に「端末設備識別番号申請書」を提出し、MSINを払い出してもらいます。SIMカードの枚数分MSINは必要となりますので、あらかじめ実際に利用する端末数を想定して払い出しを依頼します。
なお、実験試験局の場合、「実験用PLMN」という番号が定義されています(番号は001-01)。実験用PLMNを使う場合は総務省へのMSIN申請は必要ありません。各利用者は任意でMSINに該当する10桁の番号を割り当てることができます。実験用途や電波暗室内での完全に閉じた環境での検証の場合は、この番号を使うことが推奨されます。

2)自営以外(クラウドコア)の場合

自営利用の場合で、ローカル5G用のコア設備はクラウドサービスを使うという構成もあります。
この場合、SIMカードは「卸元事業者(クラウドコアの提供者)」が提供しますので、利用者が調達する必要はありません。また、IMSIも卸元事業者から提供される為、利用者が直接総務省に識別番号申請を行う必要はありません。

3)電気通信事業の場合

ローカル5Gは自営用途だけでなく、外部にサービスとして提供されるケースも出てきました。
基地局とコア設備をセットでサービス型として提供しているケースもあれば、コア設備のみをサービスとして提供しているケースもありますが、いずれの場合も電気通信事業に該当する可能性がある為、自営用とはIMSIの利用ルールが異なってきます。
電気通信事業の場合は事業者としての届出または登録が必要となります。申請する設備が電気通信事業に該当するかどうか、届出、登録のどちらに該当するのかは、システム構成や利用者と提供者の関係など、状況により異なってきますので、ここでは詳細は記載いたしません。
電気通信事業の場合、IMSIについては「自営用PLMN」が使えません。MCCが440または441から始まる電気通信事業用のIMSIを申請する必要があります。
電気通信事業者はコアを自社で保有しているケースがほとんどです。SIMの調達は事業者が行うと考えてよいでしょう。

まとめると以下の通りです。

SIMカード、IMSIの手続き

ここまで、ローカル5GにおけるSIMカード、このカードに登録されているIMSIについて説明してきました。
IMSIについてはわかりづらい部分もあると思います。申請についてはCTCグループでも支援しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

SIMカードによる認証にも一つ問題点があります。それは物理カードを使用している場合、カードを入れ替えることで本来ネットワークに繋がる想定のない機器が接続できてしまう可能性がある点です。
SIMカード入れ替えによるセキュリティ問題を解決するソリューションもあります。今後、当コラムでこのソリューションについてもご紹介予定です。

著者

中島 暁子

中島 暁子

2002年入社。衛星通信運用業務を経て、2008年より地域WiMAX、Wi-Fiなど無線関連のサービス企画、プリセールス、導入作業に携わる。 現在はCTCグループの5G/ローカル5GにおいてRAN領域全般を担当。
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