CTC、津波の被害評価シミュレーションサービスを開始

防災・減災を目的に津波被害の評価手法を独自開発

2012年04月20日 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(略称:CTC、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:奥田陽一)は、本日より、自社が保有する津波シミュレーション技術、流体解析技術、構造解析技術を組み合わせ、防災・減災のための津波による被害評価シミュレーションサービスの提供を開始します。石油プラント、化学薬品施設、港湾施設およびその他湾岸地域の工場などを中心に営業展開し、3年間で5億円の売上を目指します。

津波被害を評価する津波シミュレーションは、従来、津波の高さから波力を計算し、沿岸地域における浸水域を評価する、2次元平面の津波解析モデル(非線形長波モデル※1)が一般的でした。しかし、この解析モデルは鉛直方向(水平面に対して垂直の方向)の流速を平均化しているため、構造物への影響を評価する目的には適していません。

今回CTCは、2次元平面の津波解析シミュレーションと、数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)に基づく自社開発の3次元流体解析ソフトウェアFINAS/CFD(ファイナス・シーエフディ―)※2を組み合わせ、3次元シミュレーションによる構造物への津波被害の評価手法を開発しました。これは2次元平面の津波解析シミュレーションを1m以下のメッシュまで細分化し、3次元での流体解析を行うことで、構造物にかかる圧力がどのように変化するかを求める手法です。また、構成材料や構造を加味した解析により、変化する圧力からの構造物への被害を評価することできます。

これまで、流体による構造物への影響の解析は、風車や船のプロペラ、石油タンク内での石油の揺れによるタンクへの影響など、局所的なものに止まっていました。財団法人計算科学振興財団のスーパーコンピュータFOCUSスパコンシステム※3を使用して並列で計算することで、数百万から数千万に細分化された広域な流体解析が可能になりました。

CTCは、地方自治体のハザードマップ、2011年東北地方太平洋沖地震津波の原因究明の解析、確率論的津波ハザード評価など、長年に渡って津波シミュレーションの実績があり、2003年から販売を開始した3次元流体解析ソフトウェアFINAS/CFDに関しても、プロペラ機や自動車の空気流動、血管内の血小板凝縮解析など、様々な団体や企業に提供しています。また、GPGPU※4や、MPI/OpenMP※5等の並列計算を活用した各種のシミュレーションソフトウェアも開発し、販売しています。

CTCは、東日本大震災直後に、津波解析、流体解析、構造解析の専門家から成る横断チームを編成し、東北地方沿岸の港湾および構造物を対象に、本津波3次元シミュレーションを実施、高い再現性が確保され本手法の妥当性が確認できました。今後、考え得る最大規模の津波を想定した防災・減災対策に貢献するべく、津波に対する被害評価シミュレーションを提供していきます。

相馬港周辺でのシミュレーション画像

浸水前の相馬港周辺

浸水前の相馬港周辺

浸水深最大時のシミュレーションイメージ

浸水深最大時のシミュレーションイメージ

  • ※1 非線形長波モデル(浅水モデル)について:海岸の近くでの津波の挙動を表す際、一般に用いられるモデル。静水時の水深、津波による水位上昇量、2次元平面での流量(流速×全水深)、重力加速度、地球の自転に関連する定数等をもとに算出する。
  • ※2 FINAS/CFDについて:FINAS/CFDは自社開発した流体解析システムです。FINASは独立行政法人日本原子力研究開発機構が開発した構造解析システムであり、CTCは同機構の許諾を得て販売・保守および改良を行っています。
  • ※3 FOCUSスパコンシステムについて:財団法人計算科学振興財団が2011年4月より運用を開始した、産業界での使用を目的としたスーパーコンピュータシステム。ピーク性能で28テラフロップス(理論値)を有したPCクラスタ型スーパーコンピュータ。
  • ※4 GPGPUについて:General-purpose computing on graphics processing unitsの略。画像処理を行う演算装置(GPU)を様々な計算に用いる技術。PCレベルでもGPUを使用した並列計算により、計算時間を通常の10分の1にすることも可能。
  • ※5 MPIおよびOpenMPついて:MPIは、Message Passing Interfaceの略で、複数のコンピュータを使用した分散メモリ型の並列計算の手法および規格。OpenMPは、共有メモリ型の並列計算の手法および規格。

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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
広報部

E-mail:press@ctc-g.co.jp

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