コラム

5Gが実現するこれからの未来

第2回 約10年ごとに新しい世代へ進化

更新
5Gが実現するこれからの未来

ここでは、5Gにおける現在の状況や概要についてご紹介いたします。

(1)約10年ごとに新しい世代へ進化

1979年に第1世代のサービスが開始されて以降、第5世代まで約10年周期で新しい通信規格に世代交代が行われ移動通信システムの性能は向上していきました。

移動通信サービスの発展と普及

大きく4つの時代に分かれますが、移動通信システムやサービスがどのように発展、普及してきたかを説明します。

4つの時代

移動通信サービスの発展

移動通信サービスの黎明期

1979年 世界初セルラー方式による第一世代アナログ自動車電話のサービスが開始
1985年 通信の自由化、ショルダーフォン登場
端末はレンタル制で料金が高額なため、あまり普及せず。
1986年 ポケットベルが普及、外出中の人に連絡が可能に。
1987年 ポケベルに数字機能が追加、メッセージの送信が可能に。
数字の語呂合わせによるメッセージが社会現象に、普及が進む。
(例)「4649(よろしく)」、「114106(愛してる)」

携帯電話の普及

1993~1998年大きく2つの出来事があり、急速に携帯電話が普及。

  1. 端末の多様化
    携帯電話の小型化、様々な端末がラインナップされる。
  2. 制度の改革
    端末がレンタル制から売切制に、携帯電話料金の認可制が廃止事業者間競争による料金の低廉化が進みました。

フィーチャーフォンの全盛

1999年 携帯電話の電話番号が10桁から11桁に変更
携帯電話対応のインターネット接続サービスが登場、Eメール、銀行振込み、チケットの購入など、オンラインサービスが携帯電話で利用可能に。
2000年 携帯電話にカメラが搭載、撮影した画像をEメールで送信する機能が提供。
2001年 携帯電話端末でゲームなど多様なコンテンツが登場。
2004年 パケット定額制が開始、従量課金から定額制に。
2005年 「おサイフケータイ」のサービスが開始
2006年 第3.5世代移動通信システムを用いたサービスが開始
高速化・大容量化が行われ、画像や動画の閲覧が円滑になりました。
携帯電話でのインターネット利用がより快適、豊かに。

スマートフォンの登場

2007年 「iPhone」登場。デザイン性の高さとカンタンな操作性から大人気に。
世界的にスマートフォンへの移行が始まる。
2008年 「iPhone 3G」日本で販売が開始(ソフトバンク)
2009年 Android対応のスマートフォンが販売開始
2011年 「iPhone 4S」日本で販売を開始(ソフトバンク、KDDI)
2013年 「iPhone 5s/5c」日本で販売を開始(ソフトバンク、KDDI、ドコモ)

超スマート社会へ

ここまで解説してきましたが、携帯電話の発展と普及で人々のコミュニケーションは大きく変わってきました。

「個対個」のコミュニケーション

場所に紐付いたコミュニケーションツール(固定電話)から個人に紐付いたコミュニケーションツール(携帯電話)になり、人々は「いつでも、どこでも、だれとでも」双方向コミュニケーションを取ることが可能となりました。

「細やかな文脈と感情」のコミュニケーション

音声だけでなく文字でのコミュニケーションも可能となり、絵文字など「用件」を伝えるだけでなく、「より細やかな文脈と感情のやりとりが」可能になりました。

「ビジュアル」のコミュニケーションへ

スマートフォンの普及で写真や動画を加工するアプリや、SNSの普及で今見ている動画、聴いている音楽、共感したサイトやSNS投稿など、他者と共有できるようになりました。

今後、AIやVRなどの新たな発展と5Gにより、それらを活用した新たなサービスが、今後のコミュニケーションをより豊かにしていくでしょう。

(2)各世代における移動通信システムの特徴

ここでは、各世代の特徴を説明しながら移動通信システムがどの様に進化してきたかについて解説します。

1G:アナログ方式による通信規格〈電話が持ち運べる時代に〉

1980年代に自動車電話やショルダーフォンが登場、国内の移動通信が幕を開けしました。

この時に初登場した移動体通信の規格が1G(第1世代移動通信システム)です。
1Gでは「FDMA方式(Frequency-Division Multiple Access)」が採用されました。

FMDA

FDMA方式は電波の周波数帯を複数の帯域に分割することで多元接続を行う無線通信技術で、アナログの電波で通信をしていました。
このため、雑音が大きく盗聴されやすいリスクもありました。

HICAP方式(NTT大容量方式)とTACS方式(米国Motorola社)の2種類サービスがありましたが、2Gへの移行に伴って1999年にHICAP、2000年にTACSがサービスを終了しています。

2G:デジタル方式による通信規格〈携帯電話からインターネットへ接続可能に〉

1993年に登場したデジタル方式による通信規格が2G(第2世代移動通信システム)です。
2Gでは「TDMA方式(Time Division Multiple Access)」となり、無線通信がアナログからデジタルへ移行したことで、携帯電話からのデータ通信が可能になりました。

これにより、これまで自宅やオフィスでしかできなかった「メールの送受信やインターネットへの接続」が移動中でも行える様になり、「カメラ機能付き携帯電話」や「おサイフケータイ」 などが登場、コミュニケーションの手段が豊かになりました。

TDMA

TDMA方式は、時分割多元接続で各端末に一定時間の通信周波数を割り振る無線通信技術です。
周波数帯を分割して割り当てるFDMA(1G)と比較して、ノイズが少なく電池の持ちが向上、周波数の利用効率も上がる反面、干渉を避けるためにタイムスロットの間に僅かな無通信時間を挿入するため時間効率が下がるといった特徴がありました。

主なサービスにPDC、cdmaOneなどがありましたが、2Gのサービスは2012年に終了しています。

3G:CDMA方式による通信規格(IMT-2000)〈情報が持ち運べる時代に〉

1G(アナログ方式)、2G(デジタル方式)に続く、移動体通信の規格が3G(第3世代移動通信システム)で、高速データ通信が可能になった点が大きな特徴です。
これによりテレビ電話やインターネット(Web・メールなど)、情報サービス(音楽配信サービスなど)、データ通信が活発になりました。

CDMA方式の特徴

3Gは「CDMA方式(Code Division Multiple Access)」となり、符号分割多元接続となります。
方式の概要は「電波一つひとつに符号をつけて、同時にたくさんの電波をやり取りできる」技術です。

CDMA方式の特徴は大きく2点です。

  • FDMA(周波数分割)やTDMAU(時間分割)に比べ、時間や周波数で通信路を分割しないため、無駄なく通信路が共用できます。
  • 信号を受信しても符号が分からなければ元のデータを取り出せないため、秘匿性が高く、スペクトラム拡散によりノイズや妨害への耐性も強いです。

通信方式は、「W-CDMA(NTT系、ソフトバンク系)」、「CDMA2000(KDDI系)2022年終了」がありますが、3Gを改良した拡張仕様(HSDPA(HSPA))により、さらに通信速度の高速化が行われ「3.5G」(第3.5世代)と呼ばれています。

4G:LTE方式による通信規格 〈データ通信がより高速化に〉

4G(第4世代移動通信システム)は「LTE(Long Term Evolution)」という通信規格で、3Gから4Gへ移行する中間技術として登場しました。
下り通信と上り通信で別帯域を用いる「FDD-LTE」と、下り通信と上り通信で同一帯域を用いる「TDD-LTE」の2方式があります。

スマートフォンの登場で、爆発的なデータ通信への需要に対応するため、データ通信に特化して高度化させた規格で、今までの規格と大きく違う点は、データ通信に特化して開発されたことです。
このため、音声通信は、従来規格にフォールバックすることで対応していましたが、後に「VoLTE(Voice Over LTE)」という音声をデータとして送る規格が作られ、音声通話に対応しました。

また、複数の周波数帯を使って通信する「キャリアアグリゲーション(CA)」を始めとする新技術を盛り込み、“第4世代”を担う「LTE-Advanced」という規格が登場、下り1Gbps超、上り100Mbps超の通信を実現しています。

著者

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 情報通信ビジネス企画室 ITビジネス推進第1部 エキスパートエンジニア 村本 博

村本 博

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
情報通信ビジネス企画室 ITビジネス推進第1部
エキスパートエンジニア
村本 博

1970年兵庫県生まれ。大学卒業後、通信事業者に入社。
移動体通信ネットワークの構築に従事し、第1世代(1G/TACS)から第4世代(4G/LTE)までモバイル通信の発展とともに歩む。
専門は無線通信分野で、エリア戦略をはじめ、無線設計/エリア設計/オプティマイゼーションの他、基地局工事の推進・監理業務に従事。
2021年伊藤忠テクノソリューションズ入社、現在はRANビジネスの企画および推進を担当。

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