国内初、「東日本大震災の教訓を踏まえたBCM有効性向上への提言」を公表

2012年01月31日 株式会社インターリスク総研
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

MS&ADインシュアランス グループの株式会社インターリスク総研(社長:近藤 和夫)ならびに伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(社長:奥田 陽一)をはじめとする24機関は、事業継続マネジメント(BCM)の観点から東日本大震災を総括し、今後の事業継続マネジメントシステム(以下、BCMS)のあり方についての提言書をまとめました。本提言は、BCMの有効性ならびに実効性向上へ向けた課題を明示し、さらに今後のあるべき姿について具体的な提言を行っており、今回の大災害を経験した日本から全世界へ向けて、積極的に発信していくことを目指します。

1.刊行の背景

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本の歴史において過去例のない超広域かつ複合的な大災害であり、企業の活動も大きな影響を受けました。東日本大震災を通じて、社員の安全確認などの緊急時対応や事業継続における日頃の「備え」が活かされた一方、今までの考え方による事業継続計画(BCP)の有効性・実効性が十分ではないことが判明しました。また、国際的にも、国際標準化機構(ISO)による国際標準の正式発行(ISO22301)を今夏に控えており、国内外でBCMSが新たな段階を迎えています。

2.提言の内容

東日本大震災は、企業のBCMSの様々な課題を浮き彫りにしました。本提言では、既存のBCM取組みに加え、企業が新たに取組むべき事項についても触れています。

<第1章>事業継続上判明した課題と対応策
<第2章>BCMの活用と具体的提言 ~既存のBCM取組みに対する提言~
<第3章>企業がBCMS上新たに取組みを推進すべき事項 ~新しい取組みに対する提言~

3.事務局からのコメント

社会のリスクが変化、そして多様化する中で、日本社会そして企業など組織は、リスクとの付き合いを戦略的に変えていく必要があります。企業や団体の責任者は、BCMSや危機管理の考え方を社会および組織に確実に定着させるためにも、PDCAサイクルというマネジメントシステムの枠組みの中で、繰り返し教育・訓練・演習を行うことが何よりも重要です。
本提言が、日本の組織の事業継続性向上につながり、日本社会の継続性が高まることにより「高信頼性社会」実現に資すれば本望です。

提言作成への主な参加団体

BCI(The Business Continuity Institute;事業継続協会)日本支部
一般社団法人BCMSユーザーグループ
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)
一般特定非営利法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会
ODネットワークジャパン(ODNJ)
一般特定非営利活動法人 日本サプライマネジメント協会TM
日本危機管理学会

  • インターリスク総研と伊藤忠テクノソリューションズは本提言の取りまとめ事務局として代表してリリースしています。

4.掲載先

全文は以下のURLに掲載しています。

掲載内容の詳細

第1章

被災事例を基に課題と原因を考察し、全体を以下の8つの課題に集約したうえで、課題とその原因や今後の取組みへの提言について被災地・非被災地ごとにまとめました。

① 危機管理対応体制:被害の大きさや複合災害という特徴から既存の危機管理体制では対応できない。
② 事業継続計画(BCP):有効性・実効性がなかった。
③ リスクアセスメントと事業インパクト分析:リスクアセスメントの想定や事業インパクトの分析が十分でなかった。
④ 事業継続戦略、経営資源の提供:実現力のある戦略が必要になる。経営戦略に事業継続戦略を組み込むことが必要。
⑤ BCM要員の力量およびBCMの演習:組織として演習などを通じて全体の力量を維持・向上させることが必要。
⑥ 複合災害:組織にとっては想定外の事象をなくすことが必要。
⑦ サプライチェーン(SC)の継続性:取引先の操業が自社に与える影響等を見極める必要性がある。
⑧ 組織力:BCMの有効性の向上には組織力の強化が必要。

第2章 ~既存のBCM取組みに対する提言~

BCMの本質に立ち返り、今後、日本の組織がどのようにBCMに取組めば良いかをまとめました。

<例1>
組織において、緊急事態が発生した場合に「生き残るために何を守るのか、何の事業を継続させるのか」、そして「そのために必要な経営資源」の明確化を徹底する。さらに、その経営資源を活用できなくなった場合に具体的にどう行動するのか、という「結果事象」の考え方を導入する。

<例2>
事業継続性を継続的に向上させるBCMSの構築および運用について、経営システム(経営の仕組み)に組み込む。
① トップマネジメントによって「事業継続戦略」を明確にし、同戦略を実現するための有効な戦術の決定。
② 事業継続を実現するための平常時および緊急時における組織対応体制の明確化
③ 緊急時のトップマネジメント、および現場レベルでのリーダーシップの確立、そのための環境整備の推進。
④ 様々な演習を通じたBCPの実効性確保と向上。
⑤ BCMSの有効性評価の確立と有効性向上への取組み強化。

第3章 ~新しい取組みに対する提言

BCMの有効性を向上させ、事業継続性を本質的に高めるために、企業が新たに推進すべきBCMS取組みについてまとめました。

  • 組織開発手法の導入
    企業にとって事業継続や速やかな事業再開を実現するためには、BCPを作成するだけでは十分ではない。
    BCPを使う組織が、組織力、危機管理対応力を日頃から向上させる必要がある。つまり、平常時から組織力を向上させる取組みが大切で、この手法を「組織開発」という。
    本手法は「組織が目指す目標を達成するために、より効果的に組織を作る計画的なプロセス、または組織の目的を達成するための経営手法」であり、この実践を通して組織力を向上することが重要である。
    なお、BCMSの国際的規格である英国規格BS25999-2では、「組織の文化にBCMを組み込む」ことが要求事項として求められており、これは組織の人員に、緊急時に組織戦略、事業継続戦略実現のためにどのような貢献ができるかを確実に認識させることに他ならない。
  • レピュテーション対応
    緊急事態に際して、組織が取引先や従業員、社会などのステークホルダーからの期待に応えることができるかという視点で、平常時からマネジメントシステムの枠組みを用いて、レピュテーション対応を図る仕組みを構築する。
  • サプライチェーン継続性向上のための取組み
    東日本大震災では、自社は地震の被害を直接受けていないにも関わらず、取引先が被災し、結果として原材料が納入されずに事業が停止したケースがあった。これにより、社会生活も混乱をきたしたことから、取引先と連携したBCM取組みや演習の共同実施などを推進し、サプライチェーンの継続性向上を図る必要がある。

報道機関からのお問い合わせ先

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
広報部

E-mail:press@ctc-g.co.jp

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